ヤフーの働き方改革が目指すところ
働き方改革はオフィス移転から本格的に始まる
ヤフーは、2016年10月、東京ガーデンテラス紀尾井町へ本社を完全移転。その際に「オフィスがイノベーションを生み出す場所」となるよう、働き方を始め様々な改革に着手した。その移転プロジェクトにおいてに中心的な役割を担ったのが、現在コーポレートPD本部 働き方改革推進室長の古藤遼氏だった。バックオフィス部門だけでなく、デザイナーやエンジニアなど、各部門の実務層から担当者を集め、兼務で取り組んだという。古藤氏に、ヤフーの働き方改革の現状について伺った。
古藤遼(ことう りょう)
ヤフー株式会社コーポレートグループ コーポレートPD本部 働き方改革推進室長。1982年生まれ。福岡県北九州市出身。ソフトバンク、コンストラクションマネジメント会社を経て、2014年にヤフー株式会社へ入社。2017年より働き方改革推進室長に就任。同社の働き方改革の旗手となり奮闘中。
ヤフーで働くことを楽しんでほしい
(高山) 他にはどのような取り組みがありますか?
(古藤) “どこでもオフィス”という制度があります、これは「ひと月のうち、5日間はオフィス以外の場所で働いてもいい」というものです。自宅でもいいし、カフェでもいいという制度で、よく利用されています。たとえば「子どもに熱がでたので、今日は自宅で働きますね」という選択もできるんです。
(高山) テレワークですね。ヤフーさんの場合はまだこれからかもしれませんが、たとえば社員が親の介護をしなくては、という場合などは、一時的でなくフルで在宅勤務が必要となると思われます。
このような状況となると、もう定年まであと数年という場合は「介護に専念しよう」と、優秀な人材が退職することがあります。このようなケースについてはどのようにお考えですか?
(古藤) ヤフーは今、社員の平均年齢が35.6歳(2017年9月30日現在)なんですね。おっしゃられたような「介護のために退職しなければ」という話もゼロではありません。現状では、育児や介護、看護を行う社員を対象に、週休3日が選択できるようにした「えらべる勤務制度」を導入(2017年4月より)しています。
これにより仕事と介護の両立もある程度できるのではないかと思いますし、そういった選択ができるよう制度を整えています。この”選べる”ということが重要だと考えています。
(高山) そうですよね。いろんな選択肢があれば、社員としては納得して働くことができますよね。
(古藤) 会社としては、「時間と場所の自由」を制度として提供し、それを社員個々人が自分のライフステージにあわせて選択ができるという状態を作っています。社内だろうが社外だろうが、パフォーマンスが出せるのであればいいですよという考えです。
高山さんのいらした日本ヒューレット・パッカードのような外資系企業の方にお話を聞くと、場所や時間の観念が違いますよね。「結局物理的に離れているし」と。その上で会社として実現したいことと、その国々の法律に合わせるというところで選択されている。その視点が日本企業と比較すると一歩先にいっている気がします。
(高山) テレワークは、個々人がそれこそ個人事業主と同じような感覚で、前向きに自分のワークライフバランスを考えながら、会社や家族と折り合いつけて仕事をしていくというマインドがないとできないですね。
(古藤) プロフェッショナルコラボレーション、すなわち考え方として、「自立してる社員というのは大人である」と。成果に対して自分の責任を持っている社員はうまく回していけるということなんですよね。そのように移行していきたですね。
(高山) 日本の企業の多くは「働き方改革をやりたい」と口では言いますが、トップの方の意向を伺うと、「そうはいっても管理しなきゃ」とか「社員はサボってしまうに違いない」と考えているケースが多いんですね。
結局その”遊んじゃう”体質をつくっていることが問題で、遊びなんだけど仕事をしてる、結果的にきちっとパフォーマンスが出る、というように会社側も育てていけばいいんだけど、どうしても”管理、管理”となってしまう。それだと働き方改革はできないですけどね。
(高山) 遊びたい時に遊ぶにはどうすればいいか? たとえば金曜日にスキーに行きたいなら木曜日までに頑張って目標に到達しておく、という働き方で調整ができればいいんですが、労働時間ありきの考えだとこれができないんですね。
でもやっぱり遊ばないとだめなんですよ。部下に対しても計画立てて遊びに行くのなら1週間でも2週間でもいいよというように伝えて、上司も自ら遊ぶときはいつでも連絡できる状態を取っておいてしっかり遊ぶということが大事です。
(古藤) 遊びが重要という話はヤフーの中でも出ていて、“遊び”や“休む”ということの大切さもわかってないといけないんですよね。仕事でも私生活の上でも“自分が実現したいこと”がないと、与えられた自由をマネージして、こういう風に作り込んだらうまくいくな、とかを考えることはありません。
ヤフーとしては制度についてはたくさん準備をするけれど、社員も一個人としての生活と仕事をすることのバランス、すなわち今一番これがいいんだな、幸せだなというところを見つけてうまく回して欲しい。ここを社員にもきちんと理解、共感してもらい、この制度やオフィス、そしてヤフーで働くということを楽しんでほしいと願っています。