社⾷ドットコムが(⼀社)⽇本能率協会と⾏なったアンケート調査によると、「社員⾷堂を有している企業」では約90%超の社員が「社員⾷堂があったほうが良い」と回答し、社員⾷堂の価値を認めている⼀⽅、「社員⾷堂を有していない企業」の社員で「社員⾷堂があったほうが良い」と回答しているのは約60%に過ぎませんでした。このことから、「社員⾷堂を有していない企業には、社員⾷堂の良さが⼗分知られていないのではないか」と推測されます。
新型コロナウイルスの収束が少しづつ見えてきている昨今(取材は2022年6月初旬)、企業の出社率も増加し始めており、社員⾷堂も活況を取り戻しつつあります。とはいえ今後はテレワークが定着していくことが考えられる中、社⾷業界の市場拡⼤のためにも、社員⾷堂の良さを「社員⾷堂を有していない企業」にも広くアピールする必要があるでしょう。
社⾷ドットコムでは、企業の垣根を超えて社員⾷堂の良さを伝えていただけるよう、さまざまな社員⾷堂運営会社の⽅々に社員⾷堂のメリットや今後の⽅向性について、お話を伺っています。
今回は東京・中央区に本社を構えるコンパスグループ・ジャパン株式会社の石田 隆嗣代表取締役社長にお話を伺いました。
【プロフィール】
石田 隆嗣(ISHIDA,Takashi)/ コンパスグループ・ジャパン株式会社代表取締役社長
2018年11月、コンパスグループ・ジャパン株式会社の前身である西洋フード・コンパスグループ株式会社 代表取締役に就任。2021年4月よりコンパスグループ・ジャパン株式会社に社名変更。コンパスグループ入社以前は、1993年丸紅株式会社に入社。2001年飲食店やホテルなどの飲食業に携わる「食のプロフェッショナル」を愛称に卸売市場を展開するメトロ(本社:ドイツ、デュッセルドルフ)の日本法人であるメトロキャッシュアンドキャリージャパン入社。管理企画部長、財務監査部長、最高財務責任者(CFO)を経て、2009年に同社代表取締役に就任。1970年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。
【会社概要】
コンパスグループ・ジャパン株式会社/コンパスグループ・ジャパン株式会社は、世界の44の国と地域、約55,000カ所の運営拠点において食事やサービスを提供し、年間売上高は約2兆6000億円に上る(2021年9月期179億ポンド)。コントラクトフードサービス業界世界最大手の企業グループの日本法人。社員数 2,010名、その他従業員 13,196名。国内グループ企業含むグループ事業所数は1,500(2021年9月時点)にのぼる。コントラクトサービスとして、オフィス・工場、学校給食や教育関連施設、病院、有料老人ホーム、高齢者施設でのフードサービスを行なうほか、食材・食品の販売を行なっている。
本社所在地:東京都中央区築地5丁目5番12号 浜離宮建設プラザ4F・5F
Webサイトアドレス https://www.compassgroup-japan.jp/

コンパスグループ・ジャパン株式会社 石田代表取締役社長
Q 最近の社員⾷堂を取り巻く環境について教えてください
石田 現時点(2022年6月初旬)では、コロナ禍が収束に向かっている様相ということもあり、クライアント企業様の出社率向上と共に喫食数もどんどん上がってきています。しかし「この喫食数がコロナ前まで戻るのか?」と言われると、企業も100%出社には少し二の足を踏んでいる部分があると感じています。それをどのように戻してコロナ前よりももっと活況にしていくのか、ということについては我々給食事業者の役割だと思っています。
Q 社食ドットコムでは「社員食堂を有していない企業の方は社員食堂のメリットを十分把握できていない」と捉えています。そこで改めて社員食堂のメリットについて教えていただけますか?
石田 統計を取ったわけではありませんが、社員食堂がある企業のほうが、業績が良い企業が多いのではないでしょうか。社員食堂があるところは「会社が従業員を大事にしている」という強いメッセージになりますからね。実際、会社は従業員の為を思って社員食堂を設置していますので、従業員のみなさまはそのことを感じると思っています。
そういったことで社員の愛社精神も育まれますし、コミュニケーションの場、またはお昼に仕事から解放されて、午後の仕事における活力を養う場にもなります。社員にとって良いパフォーマンスを発揮するためにも社員食堂は有用だと考えています。
それと「健康」や「サステナビリティ」。そういったところで大きな付加価値がこれから更に生まれてくる場となりますので、これはやはり我々としては強くクライアント様に申し上げていきたいと思います。
また、コロナ禍においては「安全性」がかなり注目されました。やはりどこで召し上がるにしても、社員食堂という場所は「安全性」について、かなり気を遣っています。この「安全性」についても大きなメリットがあるんだということをしっかり申し上げながら、最終的に社員食堂の価値というものをクライアント様にどう伝え、どう広げていくのか? がこれからの課題だと思います。
また社員食堂を持つということは当然コストがかかってきます。それをこれからどうやって使っていくのか。食堂運営会社としては食事を提供するだけではなくて、すばらしい施設をどのように有効活用していくのかといったことも重要になってくるでしょう。
Q 「社員食堂の良さ」が広く伝わらないのはなぜでしょうか?
石田 社員食堂を設置するかどうかを判断する経営者のみなさまが、社員食堂の価値をどのようにとらえていらっしゃるのか、がポイントになるように感じています。「社員食堂は単に食事を提供するだけ」というイメージをお持ちだったら、「会社の近くに食堂やレストランがあるから社員食堂は不要だよね」となってしまうでしょう。
やはり、「社員食堂にはそんなイメージを超えた価値がある」ということを伝える必要があります。従業員がこれだけ短時間に集まって喋ってる空間は他にはないわけです。「うちの会社は従業員の声が聞こえないんだよな」と悩んでる経営者様がいたら、「それなら社員食堂を作ってみませんか」とお声がけしたいですね。それでどんな声が聞こえてくるのか理解してください、と。社員食堂はそれが一番簡単にできる場です。そこをご理解いただく必要があります。
それをどうやって伝えていくのかというと、我々運営会社が広く伝えていかなければいけないと思っており、メディアのみなさまの力をお借りしながら伝えていきたいと考えています。そして「今現在社員食堂を活用して本当に良かったと思っておられるクライアント企業様の声」を我々が担当者のみなさまに積極的にお伝えすることが重要ですね。

Q 今後の“社員食堂”はどのような方向に向かっていくと考えられますか?
石田 これからの社員食堂が向かう先ですが、「こうだ!と決定しているかというとそうではないと考えています。今はまだ試行錯誤している状態だと思いますが、やはり今までにない社員食堂の価値を提供する場、それは「健康」だとか「サステナビリティ」といった取り組みをどう取り入れていくかということになり、そうではない社員食堂はなかなか栄えていかないケースが増えてくるのではないでしょうか。
クライアント様とお話させていただき、それらを社員食堂でどう体現できるのか、そこにかかる我々給食事業者の責務はすごく大きいと思いますね。
また、ここ数年のコロナ禍で我々のビジネスの中におけるワーキングスタイルで、何が一番変わったのかと考えると、我が社でもDX (デジタルトランスフォーメーション)化に着手していますが、やはり「デジタル化」です。TeamsとかZoomのようなオンラインミーティングが当たり前になっていますが、「これって以前も使ってた?」と聞くとほとんどの企業が使ってはいなかったわけです。それが今では企業規模の大小に限らず、ビジネスマンが当たり前のように使っていますし、それこそ私の子どももZoomを学校で使っているなど、なんかすごいことになってるなと。
この「デジタルの波」が今後さらに広がり、社員食堂でも今までできないと思っていたことがデジタルによって可能になってくるでしょう。弊社でも「顧客満足度アンケートツール『OmniXM(オムニXM)』」を活用してお客様の声に迅速に対応したり、「食品廃棄削減システム『Leanpath(リーンパス)』」を導入し、調理ロス、販売ロスなど原因別に分別された廃棄食材のスナップショットを撮影・記録することによって、食品廃棄の傾向を詳細に把握・分析し、確実に食品廃棄物の削減を実現しています。

このような「デジタルの力」がこれからの社員食堂運営には大きな役割を担うようになり、ファクトベースのマネージメントを行なうことがこれからの道筋となるでしょう。そこに我々はファーストムーバーとして立っていきたい。
かといってデジタル一辺倒というわけではなく、食に対する温かさとか美味しさとか、人間でなければ表現できないことのマニュアルというものは残しつつ、お客様の動向などのデータ化に取り組む。要するに「DX化と人の温かさの融合」が目指すところですね。
ーこれからの取り組みに期待しています。ありがとうございました。
(聞き手/社食ドットコム編集部:文中敬称略)