社食ドットコムが(一社)日本能率協会と行なったアンケート調査によると、「社員食堂を有している企業」では約90%超の社員が「社員食堂があった方が良い」と回答し、社員食堂の価値を認めている一方、「社員食堂を有していない企業」の社員で「社員食堂があったほうが良い」と回答しているのは約60%に過ぎませんでした。このことから、「社員食堂を有していない企業には、社員食堂の良さが十分知られていないのではないか」と推測されます。
新型コロナウイルスの収束が見えない昨今、社員食堂各社は社食業界の市場拡大のためにも、社員食堂の良さを「社員食堂を有していない企業」にも広くアピールする必要があると考えられます。そこで社食ドットコムでは、企業の枠を超えて社員食堂の良さを伝えていただけるよう、さまざまな社員食堂運営会社の方々に社員食堂のメリットや今後の方向性について、お話ししていただきます。
今回はエームサービス株式会社の西日本営業開発部 五十嵐営業開発部長とIDSセンターMD企画室 宮田室長にお話を伺いました。
(聞き手/社食ドットコム編集部:文中敬称略)
五十嵐 雄介(IGARASHI YUSUKE)/エームサービス株式会社 西日本営業開発部 部長
1994年、エームサービス (株)入社。RS事業本部(リフレッシュメントサービス)にてオフィスコーヒーサービスの新規開拓に携わる。1998年より営業開発本部に異動し、東京、神奈川、北海道、山梨、長野、新潟、静岡エリアの企業、病院、福祉施設における営業開発リーダーに着任。その後、東海、神奈川エリアのオペレーションスーパーバイザーを経験し、2015年より営業開発本部営業戦略グループリーダーを経て、2021年4月より現職。
宮田 佳泉(MIYATA KASEN)/エームサービス株式会社 IDSセンターMD企画室 室長
2011年エームサービス(株)入社。IDSセンターマーケティング室に所属し、主要事業所の運営改善や営業支援業務に従事。その後、MD企画室にてコーポレートスローガン「食から日本の未来を支えます。」の実現に向け、地域経済の発展に貢献することを目指した自治体との連携協定締結や、企業の健康経営をサポートする取り組み「健康社食®️アプリ」の立ち上げ等、自社のブランド戦略及び、新たな商品・サービスの企画開発を担当。2015年より現職。
エームサービス株式会社
本社所在地 東京都港区赤坂2-23-1 アークヒルズフロントタワー /資本金 1,000百万円 /設立年月日 1976年5月6日 /売 上 高 (連結) 184,239百万円 (2020年3月31日現在) /事業所数 (単体) 1,572ヶ所 (2020年3月31日現在) /社員数 (連結) 45,135人 (2020年3月31日現在) /主要株主 三井物産株式会社(50.0%) アラマーク グループ(50.0%) /Webサイトアドレス https://www.aimservices.co.jp

Q1.最近の社員食堂を取り巻く環境について教えてください
五十嵐 コロナ禍における都市部のオフィスでは、テレワークが推進されたり出社制限が行なわれたりするなど、出勤される人数が減っているため社員食堂も大きな影響を受けています。現状については昨年(2020年)より良くなったとはいえ、弊社では全体で一昨年の2割減の稼働状態となっています。
その一方で、コロナ禍で社員食堂が再評価されている面もあります。
テレワークで在宅勤務の方が増えた本年(2021年)2月に行なった弊社独自のアンケート「消費者の食意識・行動調査」によると、「無駄な出費を減らしたい」「健康や安全・衛生に対しての意識が高い」という回答結果がでています。
また、テレワークを行っている人がいちばん食べているのは、パスタやカップ麺といった麺類で、野菜を摂る機会が減り 偏食によって健康状態を崩しがちなことを自覚されている方が多くいます。自宅中心の生活において栄養バランスの良い食事が摂りづらかったり、食べ過ぎたり間食をし過ぎてしまう傾向が強いことがわかっています。
このことがクライアント企業様からは「テレワークだと偏食がちになって健康状態が悪くなってしまう傾向がある。その点、社員食堂ではメニューバリエーションが豊富であり、栄養バランスも考慮されている」と、あらためて高い評価をいただいています。
また、テレワークにより人と話をする機会が減ったり、ストレスを抱える人が増え、「出社したり、社員食堂で話をしたりすることが、社員にとってリフレッシュの場であったりコミュニケーションを生み出す場であったということを非常に強く感じている」という企業様が多いことも挙げられます。
コロナ禍で社員食堂を閉鎖した企業様からも「社員食堂がなくなって、単に食事をするだけの施設ではないというありがたみがわかった、また再開したい」という話もありますし、仕出し弁当に変更した結果、社員から「食事が温かくない」とか「メニューがいつも一緒だ」「ランチタイムがただ単に栄養補給の時間になってしまって楽しみがない」といった不満の声も聞かれ、「ランチタイムは楽しみの時間でもあるとわかった」というお声を多くいただいています。
このように新型コロナウイルスは、急激な個人の食意識や行動に強い影響を与えている一方で、あらためて社員食堂の良さを認識し直す機会にもなっているようです。
Q2.社食ドットコムでは「社員食堂を有していない企業の方は、社員食堂のメリットを十分把握できていない」と捉えています。そこであらためて「社員食堂のメリット」について教えていただけますか?
五十嵐 前述したように「メニュー数が多い」「栄養バランスがよく健康的」、「リフレッシュできる場」、「コミュニケーションが取れる」といったことなどが挙げられます。また社員食堂を持っていなくて、これから作りたいという企業様の場合、理由の一つとして「社員食堂を作ることによって優秀な人材を採用するリクルーティングのツールにしたい」という声も増えています。
また、社員食堂があるということが一流企業の証だと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。昨今はおしゃれな社員食堂も増えていますし、社員の健康にも配慮する、という企業側の姿勢の表れとなるのが社員食堂というわけです。
最近、ある精密機器企業の社長様がおっしゃっていたのですが「社員は自分たちの子どもと同じなんだ、だからしっかりとした食事を食べてほしい」と。このように「社員には温かくて美味しい料理を食べてほしい、栄養バランスの良い料理を摂ってほしい」という経営側の社員への配慮の表れといえますし、「同じ釜の飯を食べて一体感を作る」という意味もあるでしょう。
諸説ありますが、日本の社員食堂の起源は群馬県の富岡製糸場に端を発しているといわれています。富岡製糸場では全国各地からきた子弟が働いていましたが、食堂があることで国元の親御さんは安心したといいます。
社員食堂があるということは、単純にいえば設置していない企業様に比べて福利厚生が手厚いわけです。それは会社として社員への想いの一端を示す施設でもあり、その会社が働く人の健康を支えるという姿勢を表しているといえるのではないでしょうか。
(次ページへ続く)
1
2