新型コロナウイルスの影響で、新しい働き方や生活様式の変化が起きています。たとえばテレワークが常態化することは、企業で働く人にとって「社員食堂」の利用度が減ることにつながる・・・など、社員食堂業界も大きな変化の真っ只中にいます。
一方で社員食堂が担ってきたコミュニケーションの場としての役割などが、企業内で大きな意味を持っていたことが判明するなど、あらためてその価値が見直されつつあるという一面も浮かび上がってきています。
そこで社食ドットコムでは、社員食堂に熱視線を送る各業界の方にお話しを伺い、これからの社員食堂の方向性や羅針盤となるべくキーパーソンに話を伺っています。
今回ご紹介するのは、展示会を通じて新たな価値を生みだしている日本能率協会。その産業振興センター 第2事業グループ グループ長である丸尾氏のお話をご紹介します。
(聞き手/社食ドットコム編集部:文中敬称略)
プロフィール 丸尾 智雅(MARUO,Chiga)/一般社団法人日本能率協会 産業振興センター 第2事業グループ グループ長
1997年日本能率協会入職。セミナーの運営やカンファレンスの企画を手がけた後、2007年人事部、10年から経営人材センターで再びセミナーなどの企画運営に携わり、次世代経営者育成、役員研修を担当する。2018年より産業振興センターにてHCJ(国際ホテル・レストラン・ショー、フード・ケータリングショー、厨房設備機器展の3展合同展示会)の担当となる。HCJにて様々な企画の中で、社食に関するセミナーおよびイベント企画も手がけ、現在に至る。
会社概要 一般社団法人日本能率協会
1942年(昭和17年) 3月30日設立。日本能率連合会と日本工業協会の2大能率団体が岸信介商工大臣の斡旋により統合され日本能率協会として創立。初代会長の伍堂卓雄が示した「運営の三原則」(日本的性格の能率運動・理論よりも実行・重点主義)は、JMAの根幹である。
一般社団法人日本能率協会 WEBサイト https://www.jma.or.jp/
1)貴会では各業界の様々な展示会を開催されていますが、コロナ禍での展示会の開催状況はいかがでしょうか?
丸尾 小会ではコロナ禍における展示会開催について、日本展示会協会の「展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン」および国際見本市連盟(UFI:The Global Association of the Exhibition industry)「国際見本市連盟の指針」、そして展示会場が定める「展示会における新型コロナウイルス感染防止のための対応指針」に基いて、ご参加される皆様の安全を確保するため、感染対策に関する取り組みを定めています。そして所管官庁、自治体、展示会場など、関係各所と緊密な連携を取りながら開催しています。
2)コロナ禍で展示会も影響が出ていると思いますが、展示会はどのような取り組みをされていますか?
丸尾 ご存知のように、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令されたり、海外からの入国制限が行われるなど、すべての展示会の参加者数に少なからず影響が出ています。
そんな中、現在行なっているのが、リアルの展示会を開催すると同時に、オンライン商談会を設定していることです。
今までは会場が大きすぎて本来マッチングできる企業同士がすれ違うという機会損失が生じていた可能性がありましたが、オンライン商談会により、バイヤーが広い会場を回らなくても「目的の商材やサービスを提供している出展者と商談ができる」というもので、出展者もバイヤーの方との商談の機会を増やすことができるというわけです。
また、リアル展示会の価値も再認識されてきています。商品を探しに来場されるだけでなく、抱えている課題へのヒントを得るため出展者とのコミュニケーションにも意義を感じているという声を多く聞いています。これからの展示会はリアルとオンラインが相互に価値を補完しあえるものになっていくのだと思っています。
3)貴会はここ数年「社員食堂」にスポットを当てられていますが、社員食堂業界のどういったところに注目しているのでしょうか。
丸尾 私たちは世の中の数歩先を探りながらいろいろな企画を行なっています。特にこの二、三年は社員食堂業界に注目していますが、それは「社員食堂の意義」が問われていることが挙げられます。
昨今はコロナ禍の影響もあり、社食をつくらずとも簡単にデリバリーで運んできてくれる時代となっていますが、そんな中でもあえて社員のために社員食堂を用意して食事を提供するということの意義が、より求められていると思います。
昨今はコロナ禍で仕方ないことですが、お昼は「孤食」「黙食」が推奨されるなど、雑談する時間がなくなって、コミュニケーションを取る時間や場所がなくなってきています。
「食べる」ということは本来楽しいことで、会社の中にそういう場所があることはとても重要だったと思うんですが、そういった意味でも社員食堂の良さやメリットというものが再度見直される時がきているのではないでしょうか。
4)「社員食堂業界に期待すること」をお聞かせください。
丸尾 私自身が社員食堂を「コミュニケーションの場」として使っていた経験から申します。
小会で、私はお昼に一人でふらっと社員食堂に行っていました。そこで偶然に異動前の部門の後輩がいたりすると話しかけていましたし、他の部門の人がいる時は仕事の話からではなくオフの話しから入って、仕事の話の情報交換を行なうなど、コミュニケーションという意味で社員食堂はすごく重宝していました。
しかし、コロナ禍で在宅勤務が増えると同時に社員食堂の利用ができなくなると、ずっと会わない人も増えてきて、社員同士のコミュニケーションが非常に少なくなってきています。
このことからも社員食堂の役割が、単に食事をするというだけでなく、仕事を進める上での潤滑油となっていたことや、気分転換ができてよりよい仕事につながっていたことを実感しています。
そういった企業の下支えしていた施設のひとつとして社員食堂が重要な存在であるということを、もっと広く伝えていくことも大事だと思います。
最後に、私たちが行なっている展示会では、社員食堂運営会社が欲しているサービスや製品をマッチングさせる、ということも大きな役割となっています。そのため、我々は社員食堂運営会社のニーズをつかんでおく必要があります。
たとえば最近の社員食堂だと、コロナ対策はもちろん、食事を提供する以外にもコミュニケーションの場やリラックスする場所としての役割なども担っていますので、机や椅子もカフェのような雰囲気の物に様変わりしています。また、打ち合わせをしたり仕事をする場所であったりするなど、食事以外の利用法も広がってきているので、コンセントが利用できる机だとか、照明やディスプレイも設置されるニーズがあります。また精算方法も社員証連動や交通系カードなどのキャッシュレス化が進むなど、そういった製品やサービスを提供する企業を展示会の中でも増やしていく必要があります。
現在、私たちはサービス産業のための展示会として、フードケータリングショー、国際ホテルレストランショー、厨房機器展という3つの展示会を合同に行なっている「HCJ」というイベントを開催していますが、こちらの展示会で社員食堂運営会社のバイヤーの方には好感を持っていただいていると実感しています。実際ある社員食堂運営企業のバイヤーの方からは、「HCJでは、食堂を運営していく中で必要なものが全部揃ってるので重宝していますよ」という声をいただいています。
私たちは今後一層、社員食堂や給食業界のかた向けの製品やサービスを提供していきたいと考えています。社員食堂運営会社の方や社員食堂を対象としたビジネスを行なわれている企業の方は、ぜひともHCJ2022にご参加いただくことで、より社食業界の活性化に繋げていただければと思います。
【敬称略】 取材 社食ドットコム編集部 2021.06
HCJ2022のWebサイト
https://jma-hcj.com/