社員食堂で働くスタッフは、ただ単に料理を提供するだけの存在ではありません。彼・彼女らは、社員食堂の中心であり、クライアント企業の社員にパワーを注ぐ源となる役割を担っています。毎日の業務に疲れた社員が、おいしい食事とともに一息つく場所、そしてエネルギーを注入し、また午後からの仕事に打ち込めるよう、そして最高のパフォーマンスを発揮できるよう心身の状態を整える場、それが社員食堂です。そしてその背後には、情熱をもって料理を創り出し、ランチタイムを心地よく過ごしてもらおうとする社員食堂スタッフたちの存在があるのです。
社員食堂のスタッフは、多様なバックグラウンドを持ったプロフェッショナルたちから成り立っています。彼・彼女らは、食材の選定からメニューの考案、そして実際の料理まで、一貫してこだわりを持って業務に取り組んでいます。また、健康や栄養バランスを考慮したメニュー提供はもちろん、時には季節のイベントや特別な日にちなんだ特別メニューを考えたり、利用者とのコミュニケーションなど、創造力を発揮する場面も豊富です。
社食ドットコムでは、そんな「社員食堂で働く人」にスポットをあて、社員食堂という場所で働くことの魅力ややりがいなどを紹介します。
【プロフィール】
山崎 葉子 さん
フジ産業株式会社 コントラクトフードサービス事業本部 東京支店
豊田通商株式会社 社員食堂「豊通カフェFLAT」チーフ 兼 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士の免許取得、企業の社員食堂で管理栄養士として、献立作成・発注業務・ 栄養管理・イベント企画を担当。
2015年フジ産業入社以降は、豊田通商株式会社 社員食堂「豊通カフェ FLAT」で管理栄養士・調理担当として勤務。2021年4月より現職。
【会社概要】
フジ産業株式会社
1968年(昭和43年)1月設立。資本金4,700万円。売上120億円。事業所数約550ヶ所。従業員数3,600名(2023年12月現在)。中堅の給食会社として社員食堂、学校給食、福祉向け給食を受託。2014年豊田通商による資本参加、2020年完全子会社化。「食を通じて人、社会から信頼され豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」を企業理念に日々挑戦を続けている。現在は既存の給食サービスのレベル向上に加え、人手不足対応の自社製造完全調理済み食材「クックパック」の拡販にも注力している。
本社所在地:東京都港区虎ノ門3-22-1 虎ノ門桜ビル5F
Webサイトアドレス:https://fujisg.co.jp/
1.フジ産業を選んだ理由
幼い頃から台所に立つことが大好きで、よく母にお願いして手伝わせてもらっていました。高校で進路に悩んでいた時、母から「食に携わる資格をとってみたら?」と言われ、管理栄養士を目指す事にしました。
大学の校外実習で、1週間社員食堂で実習させていただきました。コンパクトな厨房でしたが、次から次へとたくさんの種類の料理がでてきて、オフィス内でこんなにもランチが楽しめるんだ、社食ってスゴい!と衝撃を受けました。実習を受け入れて下さった栄養士、調理師、調理補助の方々は皆さんとても楽しく仕事をしていて、召し上がるお客様の事を思い浮かべながら作業しているのが印象的でした。この校外実習をきっかけに、社員食堂で働いてみたいな、と思うようになりました。
フジ産業は2社目なのですが、前会社では、栄養士として献立作成のスキル、在庫管理の仕方、店舗内での栄養士としての振る舞いなど、社食の栄養士としての極意をみっちり鍛えて頂きました。そして、入社10年が過ぎ、栄養士としてだけでなく、もっと調理技術を磨きたい、調理チーフの立場で献立作成をしてみたいと強く思うようになり、私の二刀流を受け入れてくれたフジ産業への転職を決意しました。
2. 日々の業務内容
出勤したらすぐに厨房作業に入ります。昨日の来客数、当日の天気から、何を何時にどのくらい仕上げるかを各調理スタッフと相談します。納品、検品後は時間との勝負で当日のメニューを仕上げていきます。
9時頃にパートスタッフが出勤すると、朝礼で連絡事項を共有します。この時、一緒に体操をして、当日のスタッフの体調やテンションを確認します。いつもより元気がないな、というスタッフがいたら、作業の合間に声掛けをしたりして、コミュニケーションを積極的に取るようにしています。
11:30の営業開始後は提供口の後ろで、追加調理の対応をしています。なるべく出来立て料理をお客様に召し上がっていただきたいことと、食品ロスの回避のため、少量ずつ、数回に分けて調理をしています。合間にグラムビュッフェや小鉢の補充、各レーンのフォローに回ります。
ある1日のスケジュール
午後は発注業務や売上の確認、翌日の仕込みの準備、調理工程表の作成、日によって献立作成や掲示物の作成を行います。2ヶ月に一度は、名古屋の店舗とのイベント会議があるので、どんなメニューが今流行っているのか、また季節のメニューを調べたりもします。毎日食べに来てくださるお客様もいるので、新しいメニューやイベント企画にもチャレンジし、飽きのこない食事、楽しんでいただける食事の提供をいつも心掛けています。
3. 仕事のやりがい
今は事業所の主任として、献立・レシピ作成から、作業工程の決定、調理をさせていただいています。メイン調理をさせてもらうようになり実際に作業すると、自分のレシピ作成の甘さを痛感しました。試作では上手く出来たけど、当日50人前で作ったら同じ味にならなかった、この調味料の順番だと具材の美味しさが引き立たないな、など、修正で献立表が真っ赤になったくらいです。修正を重ねてブラッシュアップしたレシピは、とても大切に思います。
そんなレシピで作成したメニューが完売したり、「美味しかったよ、またメニューに入れてください」などのご意見をいただいたときは、とてもやりがいを感じます。
あとは、消費者であるお客様と直接触れ合える食堂なので、商品をお客様にお渡ししたとき、「ありがとう」と言っていただけるとやはり嬉しいです。スタッフにはいつも、提供するお料理は、その先にお客様がいることを忘れずに心を込めて調理、提供をして欲しいと言っています。スタッフ同士で意識を高め合い、より良い接客が出来た時は、お店として成長しているな、と感じます。
4. 今後の目標
昨年はクライアント様のアフリカ部署が企画するイベントの一貫として、チュニジア国のメニューを食堂でご提供しました。実際に大使館のシェフに料理をレクチャーしていただき、イベントを盛り上げる一助を担う事ができました。今までは食堂発信でイベントの企画・開催をする事が多かったのですが、クライアント様のビジネスに寄り添ったイベントが出来たことは、私たちにとっても、社員食堂をアピールするとても良い機会になったと感じています。今後も、お客様のビジネスチャンスの少しでもプラスになれるイベント・メニューを企画出来たらと思います。
また、当事業所では、2年ほど前からSDGsの取り組みとして、ソイミートメニューや、海の環境に配慮したサステナブルシーフードを使用したメニューを提供していますが、今ではメジャーなメニューになり、他のメニューに負けないくらい人気で提供数を伸ばしています。この2年間で、SDGsの目標達成って何をやればいいの? から始まり、社食でこのメニューを食べていただくと社会貢献ができる、という意識、目標に変わってきた結果と感じています。今は、サステナブルな原材料の商品がたくさん増えているので、こういった商品を使った新メニューを作り出していくことも、今後の目標となります。
実は、今回社員食堂の客席ホールをリニューアルしていただける事になり、デザインがガラッと明るくモダンでおしゃれな食堂になるというお話しをいただきました。これは、新しいジャンルのメニューやレシピを作成するチャンスなのではと感じています。どうしたらお客様に喜んで頂けるか、パワーの源になってもらえるか、考えると終わりがありませんが、より良い社食の運営のために、日々精進していきたいと思います。
(聞き手/社食ドットコム編集部)
会社名 | フジ産業株式会社 |
所在地 | 東京都港区虎ノ門3-22-1 虎ノ門桜ビル5F |
公式WEBサイト | https://fujisg.co.jp/ |