
Q3. 「社員食堂の良さ」が広く伝わらないのはなぜでしょうか?
野本 ひと昔前は社員食堂というと、まず「安い」ということが優先され、利用するほうも「とにかく素早く食事をしてすぐ自席に戻って仕事にとりかかる」といった時代が長かったのです。そのため素早く食べることができることが優先されており、そのイメージを持っている方が多いのかもしれません。
立花 企業が社員食堂を設置するとき、一番肝心なのは初期投資のコストが必要となります。そこで場所や機材を一通り揃えると、相応なコストが必要となるわけです。福利厚生にどこまでコストをかけるのか? という判断が必要となります。
そこで「カフェ程度でいい」のか、「社員食堂を作ろう」と思うのかで、全然初期投資の費用が変わってくるので、多分それを経営者さんとかその社員の方が社員食堂に対して、どれぐらい重きを置いてるか、どう考えているかによって違ってきます。
ですので、どれぐらい「いい食事が毎日食べられるか」「美味しいものが食べられるか」「健康なものが食べられるのか」といったことが社員食堂業界側からもお伝えできれば、「コストをかけても作ろうか」っていうことになっていくのではないでしょうか。
Q4. 今後の“社員食堂”はどのような方向に向かっていくと考えられますか?
立花 一例ですが、ひと昔前はルッコラやズッキー二等の食材は一般的に給食では提供されていませんでしたし、パスタではなくスパゲッティが主流で、ソースの種類もナポリタンやミートソースでした。今ではカルボナーラや明太子、アラビアータなど種類も豊富なことが当たり前になっています。今後はサステナブルシーフードや代替肉などにも注目が集まるでしょう。
このように食に対する選択肢が多く、知識や興味が非常に高いことが当たり前の世代の方々が企業に就職し、社員食堂を利用する際に「あれっ? 自分たちはもっといいものをずっと食べてきたよな」「もっと社員食堂でも『食』について取り組もう」という感覚になると思います。
その世代の方が今後食堂の担当になっていただくことで、食堂のレベルアップに繋がってくると思っており、期待しています。
野本 味や栄養面だけでなく、料理そのものの金額についても変化がでてくるでしょう。現在は提供される食事の値段が固定されていることが多いと思いますが、今後はお客様のニーズや嗜好に応じて様々な価格のメニューが用意される時代になると思います。さらに環境問題などもあり、「C定食は時間や天気、残量によって値段が変動する(ダイナミックプライシング)」など、そういう取り組みをする社員食堂が出てくるかもしれませんね。
新しい食材が登場したり、食堂の使われ方が変わってくるなど、働き方が多様化していくとともに社員食堂のあり方も多様化していく時代になっていくのではないでしょうか。
【敬称略】 社食ドットコム編集部 2021.08
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