日本のビジネスパーソンのランチ事情に、いよいよ歴史的な地殻変動が起きました。
2026年4月の税制改正により、企業が従業員に提供する食事代の所得税非課税枠が、これまでの月額3,500円から7,500円へと一気に倍増することになりました。1984年から42年間、頑なに動かなかった「昭和の基準」が、ようやく令和の物価水準に追いつこうとしています。
今回は、この改正をどう捉えるべきか、3つのポイントに絞って解説します。
1. お隣の韓国はもっとすごかった!「20万ウォン」という衝撃
今回の改正、実は「日本はようやくスタートラインに立った」というのが正直なところです。
お隣の韓国に目を向けてみましょう。韓国ではすでに2023年から、食事代の非課税限度額が月額10万ウォンから20万ウォン(約2万2,000円)へと引き上げられています。日本の新基準「7,500円」と比べても約3倍近い規模です。さらに韓国では、これを30万ウォンまで引き上げようという議論すら出ているのだとか。
もちろん物価や賃金体系に差はありますが、「働く人の食事を国が税制でバックアップする」という姿勢において、日本は国際的に大きく出遅れていました。今回の倍増は、いわば「周回遅れ」を脱するための第一歩。世界基準で見れば、まだまだ伸び代がある分野なのです。
2. 「義務」ではないからこそ、企業のカラーが試される
ここで誤解してはいけない重要なポイントがあります。この制度改正は、「すべての企業が月額7,500円まで補助しなければならない」という義務ではありません。
あくまで「上限が上がったので、最大月額7,500円までは税金(所得税)をかけずに補助していいですよ」というルール。つまり、実際に導入するかどうか、あるいはいくらに設定するかは、完全に企業側の判断に委ねられているのです。
さらに、日本の税制には「食事代の半分以上を従業員が負担しなければならない」という鉄の掟があります。たとえば、企業が上限いっぱいの7,500円を補助する場合、従業員も自ら7,500円(+税別分など)を支払う必要があります。 「会社が全額出してくれるわけじゃないのか」と思うかもしれませんが、裏を返せば、会社が7,500円を出すと決断すれば、従業員は自分の持ち出し分と合わせて「月額15,000円分」の豪華なランチタイムを手に入れられるということ。このルールを「負担」ととらえるか、「より良い食事への投資」ととらえるか、企業の姿勢が問われています。
3. 「ランチ格差」が採用力を左右する? 二極化する企業の未来
制度が「任意」である以上、今後は「充実した社員食堂や自販機などのサービスがある会社」と「そうでない会社」の二極化がよりいっそう進むでしょう。
これまでの3,500円枠では、月20日勤務として1食あたりの企業補助はわずか175円。本人の負担を合わせても350円程度のランチが限界でした。しかし、7,500円枠をフル活用すれば、1食あたりの企業補助は375円に。本人の同額負担を合わせれば、1食750円の予算が組めます。
これなら、1,000円を超えるような本格的なヘルシーランチや、栄養バランスの整った定食を「手頃な自己負担」で楽しむことが現実味を帯びてきます。
労働力減少が加速するこれからの時代、求職者は給与額面だけでなく「福利厚生の実質的な価値」をシビアに見ています。
「A社は本人の半分負担でも、会社が上限まで出すから毎日豪華なランチが食べられる。B社は補助が一切ない……」
この差は、月単位で見れば小さく思えるかもしれませんが、年間で見れば10万円近い可処分所得の差となり、蓄積される健康状態やエンゲージメントの差は計り知れません。
まとめ:ランチを「コスト」から「投資」へ
42年ぶりの改正は、企業に対し「従業員の胃袋に、月額7,500円分のコミットメントができますか?」という問いを突きつけています。
「従業員に半分負担させるのだから、中途半端なものは出せない」という緊張感が、社食や食事サービスの質を向上させる良いスパイスになるかもしれません。
ただ空腹を満たすだけの「食事の場」から、仲間とのコミュニケーションを生む「投資」としての「食事の場」へ。
就労人口減少時代である今、このチャンスを活かして自社のランチ環境をアップデートできるかどうかが、「選ばれる会社」としての明暗を分けることになるかもしれないのです。
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