【資生堂】社員食堂がある企業に「社員食堂の魅力」について聞いてみました!

新型コロナウイルスの影響で、新しい働き方や生活様式の変化が起きています。それに伴う出社制限やテレワークが常態化することは、企業で働く人にとって「社員食堂」の利用度が減ることにつながる···など、社員食堂業界も大きな変化の真っ只中にいます。しかしその一方で社員食堂が担ってきたコミュニケーションの場としての役割などが、仕事をこなす上で大きな意味を持っていたことが判明するなど、あらためてその価値が見直されつつあります。

そこで社食ドットコムでは、社員食堂を実際に有している企業の社員食堂担当者の方に、社員食堂の現状やそのメリット、感じている可能性などについてお話をうかがい、より多くの企業・人々に社員食堂の「良さ」を発信していただくべくインタビューを敢行しています。

今回ご協力いただいたのは株式会社資生堂。2021年6月にグローバルビジョンセンターのリノベーションを行なうと同時に社員食堂もリニューアル。新しく「ZEBRA(ゼブラ)」として生まれ変わっています。このゼブラの担当者である同社ファシリティマネージメント部の近藤さんにお話をうかがいました。

(聞き手/社食ドットコム編集部:文中敬称略)

【プロフィール】 近藤 真理子(KONDO,Mariko)/株式会社資生堂 ファシリティマネジメント部 オフィスコンシェルジェグループ。入社後、社内刊行物のデザイン業務、ヘアメーキャップアーティストのプロデュース業務を経て、2019年よりファシリティマネジメント部に所属。カフェディレクターとして、資生堂ジャパン(株)の社内カフェやダイニングのオープン、(株)資生堂グローバル本社カフェテリアのリノベーションに参画。社員の美と健康をテーマに、コンセプトの立案やデザイン、メニュー開発、社員どうしの交流を目的としたイベントの企画など、食を通じたコミュニケーションに携わる。

【会社概要】 株式会社資生堂
1872年日本初の民間洋風調剤薬局として東京・銀座で創業し、2021年現在で約120の国と地域で事業を展開。世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指し、化粧品事業だけでない、まだ見たことのない商品と新しい価値を創造し、美を通じて世界中のお客さまを幸せにする「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を実現する。
株式会社資生堂 企業サイト https://corp.shiseido.com/jp/

社員食堂は社員が安心・安全に食事ができる場所

Q 御社の社員食堂の現状について教えてください

近藤 弊社では出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークスタイルが推進されています。緊急事態宣言中は8割の出社削減(2021.9月末時点)に伴い、利用者数も減りましたが、社員食堂は朝8時から17時まで営業しています。出社している人の社員食堂利用率は約4割と高く、中には「朝のパン、昼にカレー、夕方にコーヒーと出社時には3回利用する」という社員もいるほどです。

感染症対策としては、コロナ禍での開業となりましたので、オープン時から椅子を間引き、150席程度に減らしています。社員には対面にならないよう呼びかけ、黙食を周知していますし、植栽とあわせたクリアパーティションを配置しています。さらに自社製アルコール消毒液を至る所に配置しており、手指の消毒や使い捨て手袋の利用を徹底しています。また執務フロアに持ち帰って食べることができるよう、その日のおすすめメニューを詰め合わせたお弁当も販売しています。 このように社員が安心・安全に食事ができる場所として社員食堂は万全な感染対策をとっていますので、社員には「内食推進」を呼びかけています。

緊急事態宣言発令前にはバータイムに「ZEBRA BAR」を営業していました。「0次会」をコンセプトに、安心・安全に“ちょい飲み”できる場所を提供し、感染予防のルールを徹底しながら、気軽にリアルな意見交換ができる場として用意していました。ここでノンアルコールカクテルを提供した際には、普段子どものお迎えで車を運転しないといけないとか、お酒が苦手で飲み会にいけない、お酒を飲みづらい、といった社員たちに大変好評でした。バー営業はアルコールが入ってなくても息抜きができる場所として必要だと感じています。

もちろんバーでも徹底した感染症対策を行なっており「お酒を飲んだらマスクをする」ということを徹底させるため、お酒を購入するときに「私は必ずソーシャルディスタンスをとり、マスクをして楽しみます」と宣言してもらうなど工夫しました。この時バーに来る人が「この場所を大事にしたいから」と、新しく利用する社員に声がけしてくれるようになるなど、社員の中から自発的にバー運営をサポートしてくれる人があらわれたことは嬉しかったですね(2021.10月現在バー運営については世の中の趨勢をみながら週末のみ再開)。

スタッフとのコミュニケーションが社食作りの土台となる

Q 社員食堂運営において意識しているポイントを教えてください

近藤 社員になにが提供できるか(=単に昼食提供だけではない)ということ、そしてスタッフとの一体感・チーム感を大切にしています。

たとえば、社員食堂は食事をするだけでなく、社員同士のコミュニケーションやリラックスして心身を休めるための場所でもありますので、利用する社員にとって心地よい空間となるように心がけていますし、社員から「おいしかった」「サービスがよかった」と言われれば、それをすぐにカフェスタッフと共有します。オープン当初は週に一回ミーティングをして、社員からの声をそのままスタッフに伝えました。「小鉢が取りにくいと言ってるけどどうしようか」などと伝えるのですが、スタッフ側にも事情があって、理由を聞くと理解できることもあります。そうこうやっているうちにスタッフとのコミュニケーションが取れ、チーム感が出てきました。結局、社員食堂運営会社への丸投げをしてしまうと、社員食堂運営会社も良かれと思ってやっていることが我々の望んでいるものと違っていることがあります。その違和感がお互いに伝わらないと、双方のストレスが激しくなってしまうので、軌道に乗るまではカフェスタッフとしっかりとコミュニケーションを取って方向性を示すことが大事だと思います。

反省してる点は、デザイン会議の際にユニバーサルデザインをもっと考慮しなければいけなかったことです。車椅子が通りやすいよう、幅や高さはデザイナーさんと確認していたつもりですが、実際に車椅子のユーザーから見ると料理の位置が少し高くて取りづらかったり、視覚障がいの方にとっては動線にぶつかってしまうようなものがあったりといったことがありました。

ちなみに視覚障がいをお持ちの方に教えていただいたのですが、シールに情報を入れておくと携帯電話のカメラがその情報を読み取って、音声で読み上げてくれるというものがあります。これをメニューや精算案内などに応用できないかといったように、全員が安心安全にご飯を食べることができる場所づくりのために、そういう取り組みも行なっていきたいと考えています。

社員同士の交差点を作るということ

Q 社員食堂の担当者としての「やりがい」を教えてください。

近藤 仕事って直接「ありがとう」と言われることがあまりありませんよね。私は普段、ここで社員食堂全体の様子を見ながら仕事をしているのですが、私の姿を見かけた人から「ありがとう」とか「おいしかったよ」と声をかけられますので幸せな気持ちになりますね。また、社員同士がカフェテリアで再会しコミュニケーションを交わす様子を見かけると嬉しくなります。

また、私自身は料理を作るわけではないので、場をどう作って行くかを日々考えています。メニューやイベント内容を執務フロアのサイネージモニターで情報発信していますが、BGMの選曲も社員食堂の雰囲気を作る上で重要です。弊社は「アクティブ ベースド ワーキング(ABW)」と言って、仕事をする席が固定席ではなく、全フロアどこで仕事をしても良く、集中したい時は集中できるところ、二人で少し話したい時はこっちでやろう、というように仕事によって場所を変えることができます。そのため「ZEBRA」で仕事をする人もいるので、雰囲気を維持しつつ選曲します。他には「今日は終業後80年代ロックを聴きながら飲みませんか?」といった発信もしています。

テレワークで普段あまり会えなくなった社員同士が、出社した際にお昼に久しぶりに再会する、というシチュエーションがすごく多いのが社員食堂です。「最近流行のあれ、観た?」といったことを話して「あれはこうなんだよ」といった内容を10分、15分ほど話して、「今日会えてよかったよー」と帰っていく場面をここにいると頻繁に見るのですが、そういったことが、社員にも会社にもとても大事なことなんだと感じています。そして、この情報の交差点であり社員同士の交差点であるこの場所を作っているということには大きな満足感がありますね。

偶然の出会いが新しい何かを生み出すキッカケとなる

Q 企業や社員にとって、社員食堂があることのメリットは何だと思われますか?

近藤 社員食堂利用者は日々体温測定も日々行なっている社員ですし、食堂自体もしっかりと衛生管理されているので安心です。コロナ禍においても社員食堂が持つメリットは、企業にとってもそこで働く社員にとっても大きいものだと言えます。   

そして、ランチタイムの社員の様子を見ていると実感するのですが、社員同士の交流や雑談の場である社員食堂はクリエイティビティを生む場であると思います。「ZEBRA(ゼブラ)」と名付けたのも、当社のワークスタイルコンセプトである「創造力の交差点(ゼブラゾーン)」から来ています。

再会を喜び、雑談からリラクゼーション、そして仕事のヒントまで生まれる場、それが社員食堂です。ハイブリッドワークや ABW が浸透したいま、こうした偶然の出会いが非常に重要で、役職も関係なく、まったく違うバックボーンの人生を歩んだ人が同じ会社に入り同じ釜の飯を食べている。そんな空間で社員同士が交差することで、化学変化が生まれ新しい発想が湧き起こる。また、各自が抱えている問題や悩みが小さな芽のうちに解消されていると思います。もし社員食堂がなかったら、このようなことの重要性に気付けなかったでしょう。健康管理はもちろんのことですが、そういう意味でも社員食堂があるメリットは大きいと言えます。

━ありがとうございました。

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