2026年、福利厚生費としての食事補助における非課税限度額が拡大されることとなり、日本の「社食」は大きな転換期を迎えました。コスト抑制を優先した従来の「空腹を満たす場」から、従業員の健康増進やエンゲージメント向上を叶える「投資の場」へと、その役割はさらに変化していくことが想像されます。
本記事では、食堂システムメーカーである株式会社デンソーウェーブのソリューション事業部 事業戦略企画部 商品企画室の横井担当課長にお話をうかがいました。税制改正を好機に変え、企業の成長を「食」から支える戦略と、明日から取り入れられる運用のヒントを探ります。
【プロフィール】
横井 文彦 (よこい・ふみひこ)
株式会社デンソーウェーブ ソリューション事業部 事業戦略企画部 商品戦略室 担当課長。2007年入社。ICカードシステムの開発(ハード、アプリ、システム)を経て、2021年よりセキュリティ/キャッシュレスの商品企画に従事。
【会社概要】
株式会社デンソーウェーブ
株式会社デンソーウェーブは、グローバルに事業展開するデンソーの非車載分野において中核を占めるグループ企業です。工場・各種機器制御、FA、QRコードを含む自動認識の3事業で、デンソーの半世紀を超えるものづくりの経験・知見を活かしたさまざまな製品やソリューションを事業所・工場からご家庭まで幅広く提供し、多様な産業・地域社会の効率向上、そしてそこに集う方々の安心・安全に貢献し続けています。
本社所在地:愛知県知多郡阿久比町大字草木字芳池1番
Webサイトアドレス:https://www.denso-wave.com/
Q1. 非課税限度額の拡大により、社員食堂における「食堂システム」の役割はどう変化するとお考えですか?
横井担当課長(以下横井):食事補助の非課税限度額の拡大により、企業は従業員の実質的な手取りを増やすだけでなく、補助枠を活かして個人負担を抑えたまま、味や健康に配慮したメニューを提供しやすくなりました。これは、毎日利用される福利厚生設備である社員食堂を通じて、従業員エンゲージメントを高める好機でもあります。
一方で、補助額管理や利用状況の把握といった運用面の重要性も高まっています。これまで決済の利便性や食堂運営管理(メニュー管理、売上管理、給与控除)が中心だった食堂システムは、今後、補助制度を適切に運用しながら、従業員満足度や健康施策も支える福利厚生プラットフォームとしての役割が求められていると考えています。

Q2. 社員食堂の利用が今後増えることが想定される中で、デンソーウェーブの食堂システムは「喫食体験」をどう向上させますか?
横井:社員食堂の利用が増える中で、利用者が最もストレスを感じやすいのが、「並ぶこと」と「食べたいものが食べられないこと」です。限られた昼休みの中でこうした状況が重なると、喫食体験そのものへの満足度は大きく下がってしまいます。
このような混雑への対応では、決済スピードが重要です。決済が滞るだけで社員食堂全体の動線が詰まり、喫食体験が途切れてしまうからです。当社のRFID型オートレジでは、1台あたり1分間に約14人分の決済が可能で、利用者増加分をレジ性能で吸収できます。導入後もレジ増設がしやすい設計としているため、ピークタイムにも柔軟に対応できます。
こうした処理性能は、デンソーウェーブが25年以上にわたり製造業の現場で培ってきたICカード・RFID技術が基盤となっているからこそ実現できているもので、トヨタグループの大規模拠点だけでも、1日15万食規模の決済を支えています。
また、売り切れ対策としては予約システムが有効です。需要を事前に把握することで仕込み量を適正化でき、「並んだのに売り切れ」といった不満を防げます。これからの社員食堂では、メニューの質に加え、「待たせない・困らせない」仕組みまで含めて喫食体験として設計できているかが重要な評価軸になると考えています。

Q3. 食事補助の拡充は、企業の「健康経営」にどのような好影響を与えるでしょうか?
横井:これまで社員食堂は、運営コストや調理体制といった制約の中で、提供できるメニューの幅が限られるケースも少なくありませんでした。しかし非課税限度額の拡充により、従業員の個人負担を増やさず、より幅広く、柔軟なメニューを提供しやすくなっています。その結果、個人の属性や働き方に応じて、自分に合った食事を選べる余地が広がります。これは、健康的な選択を「我慢」や「ルール」ではなく、自然な行動として促せる点で、健康経営における大きな前進だと考えています。
一方で、メニュー管理や栄養素情報の正確な維持、食品ロス管理など、運用面での課題も増えます。さらに重要なのは、従業員自身の行動変容をどのように促すかです。健康経営は、良い食事を用意することに加えて、日々の食事内容を振り返り、自覚をもって選べるようになることで、少しずつ職場に根づいていくものだと考えています。
そのための仕組みとして、当社では「DECSSY Mobile」を提供しています。利用者はスマートフォンやPCから喫食履歴を振り返り、カロリー・塩分・脂質・たんぱく質・野菜量といった栄養情報を確認できます。さらに、メニュー閲覧やイベント情報の配信を通じて、社員食堂との日常的な接点を持たせ、健康を意識した選択を自然に後押しします。喫食データを本人に還元することで、健康経営は「管理するもの」から「自ら気づき、選ぶもの」へ変わっていきます。実際に、喫食データを自社の健康管理システムと連携し、健康指導につなげている企業もあります。
また、当社のお客様には健康経営に真剣に取り組む企業が多く、そうした日常運用の中から、健康経営を進めるうえでの実践的な課題を継続的に把握できる立場にあります。これらの声をもとに、食堂システムを課題起点で進化させていける点も、当社の強みだと考えています。
Q4. システム刷新を検討する企業へのアドバイスをお願いします。
横井:社員食堂のシステム刷新を進める際は、製品の機能や価格だけでメーカーを選ばないことが重要です。特に、食事補助制度の見直しや健康経営への取り組みが進む現在、社員食堂を取り巻く運用は従来より複雑化しており、導入後の運用まで見据えた検討が欠かせません。
食堂システムの導入は、要件整理から設計・施工、導入後の運営スタッフ様の教育、運用定着までを含むプロジェクトです。営業やSEの対応力に加え、長期にわたって事業を継続できる体制があるかどうかも重要な評価軸になります。社員食堂は企業インフラの一つであり、それを支える食堂システムにも安定性と継続性が求められます。
デンソーウェーブの食堂システム「DECSSY」は、25年以上にわたり製造業の社員食堂を支えてきた実績があり、大規模運用や制度変更といった環境変化にも対応してきました。ICカード・RFIDといったコア技術を自社で保有しており、また、開発から導入・保守までワンストップで提供できる点も長期運用を支える安心材料です。

また、手離れの良い運用には属人化の防止が欠かせません。ルールや運用フローをシステムに内包し、可能な限り自動化することで、ミスや対応遅れを防げます。食事補助制度への対応では、食堂事業者への支払額、従業員の給与控除額、会社の補助額、この3点を管理できるかどうかが運用負荷を大きく左右します。
Q5. 未来の社食における展望とメッセージをお願いします。
横井:私は、未来の社員食堂は企業の中だけで完結する存在ではなく、地域社会や環境ともつながる価値創出の場になっていくと考えています。社員食堂は、日々多くの食事が提供される場であり、調達や運用を工夫することで、地域の生産者を支えたり、これまで廃棄されていた食材を有効に活用したりと、企業単独では実現しにくい社会的価値を生み出せる可能性があると考えています。こうした取り組みは、CSRやSDGsといった文脈にとどまらず、企業の姿勢や価値観を、社員自身が日常の中で実感できる点にも意味があるのではないでしょうか。
こうした社員食堂の新たな価値創出を、実際の取り組みとして形にしていくためには、社員食堂に関わる、食堂事業者や利用する従業員、そして企業の人事・総務が、同じ想いや取り組みを共有できている状態をつくることが、何より重要なのではないかと考えています。私たちは、食堂システムを単なる決済やメニュー管理のための仕組みにとどめず、企業と地域をつなぐ「食のインフラ」として進化させ、人事・総務の皆様、そして食堂事業者の皆様とともに、社員の健康と社会の双方に良い影響を与える社員食堂づくりに向き合っていきたいと考えています。
編集後記
2026年の税制改正により、社員食堂は単なる食事の場から、健康経営やエンゲージメント向上を担う「投資の場」へと進化しました。今回、デンソーウェーブの横井氏のお話を伺い、RFID技術やデータ活用が、混雑緩和や個人の行動変容にどう寄与するかを深掘りしました。「待たせない」という利便性と「自ら選ぶ」健康意識。その両輪を支えるシステムの重要性が、今後の社食運営の鍵を握ると強く実感したインタビューでした。
(聞き手/社食ドットコム編集部)
| 会社名 | 株式会社デンソーウェーブ |
| 所在地 | 愛知県知多郡阿久比町大字草木字芳池1番 |
| 公式WEBサイト | https://www.denso-wave.com/ja/system/office/product/syokudou.html |




















