コロナ禍を経て、改めてその重要性が認識され社員食堂は、単なる食事を提供する場から、従業員の健康維持向上、エンゲージメント向上、コミュニケーション活性化、そして企業文化醸成の役割を担う存在へと変貌を遂げようとしています。AIやIoTといった最新テクノロジーの導入、健康志向やサステナビリティへの意識の高まり、そして個々のニーズに合わせたパーソナライズされた食体験の提供など、社食業界は今、大きな転換期を迎えています。
働き方改革や健康経営の推進、そして多様化する従業員のニーズに応えるべく、進化を続ける社員食堂。その変革の最前線で陣頭指揮を執る、シダックスコントラクトフードサービス株式会社の堤 祐輔社長に、今後の社食業界がどのように変化していくのか、その成長の可能性、そして運営会社がどのような新たな価値を提供していくべきなのかについて、熱い想いを語っていただきました。
【プロフィール】
堤 祐輔(つつみ・ゆうすけ)
1978年3月22日生まれ。シダックスコントラクトフードサービス株式会社の代表取締役社長。また、シダックスフードサービス株式会社、エス・ロジックス株式会社でも代表取締役社長を兼任。シダックス株式会社の取締役、オイシックス・ラ・大地株式会社の取締役執行役員 BtoB事業統括 兼 リテールメディア事業本部所管も務める。
1997年6月にオイシックス・ラ・大地株式会社(旧:株式会社Oisix)に入社。1999年10月に取締役に就任以降、EC事業本部長、事業本部長、アライアンス/グローバル事業本部長、ソリューション事業本部長などを歴任。2023年4月には取締役執行役員 BtoB事業統括に就任。
オイシックス・ラ・大地での豊富な経験と知見を活かし、シダックスコントラクトフードサービスにおいては、オイシックス・ラ・大地のミールキットとシダックスの給食運営ノウハウを融合させた「タイパ給食」という新たなモデルを推進。従業員が手軽に利用できる、高品質で効率的な食の提供を目指している。

【会社概要】
シダックスコントラクトフードサービス株式会社
1960年5月設立。オフィス・工場などの社員食堂、学校などの学生食堂の受託運営をメインに、学生寮・社員寮の受託運営も行う。全国に9カ所の支店、従業員数は約6,500人(2025年4月時点)。
本社所在地:東京都渋谷区神南1-12-10 シダックス・カルチャービレッジ
Webサイトアドレス:https://www.shidax.co.jp/
Q1. 社長の経歴やご自身について教えてください
堤 祐輔社長(以下堤社長):私は長崎県で生まれまして、高校までずっとサッカーばかりしていました。サッカーの思い出を紹介すると、中学生の時の大会に、長崎の国見高校という名門サッカー高校の小嶺監督というすごい監督が見学にいらっしゃったことがありました。グランドで小嶺監督を見ると、こっちを見てるんです。「これは注目されているな」と思った私は小嶺監督の前をリフティングをしながら何回も行ったり来たりしていたところ、ついに声をかけられたんです。「どけろ」って(笑)。どうやら自分より遠くにいる他の選手を見ていただけで、邪魔だっただけだったんですね。
そんな長崎で高校まで過ごし、大学から東京に進学しました。そして大学1年生の時に現在のオイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長で4歳年上の高島と出会ったのです。出会った頃はちょうどインターネットがこれから伸びていくぞという時代でした。私自身もインターネットに可能性を感じていて、そこでビジネスをするということに夢中になっていました。在学中は高島が立ち上げた学生ベンチャーで一緒にビジネスの勉強みたいなことをしており、2000年に大学を卒業すると同時に、オイシックス株式会社(現オイシックス・ラ・大地株式会社)を創業メンバーとして立ち上げました。
今 47 歳なんですけど、大学を卒業して25年間をオイシックス・ラ・大地株式会社(以下 オイシックス)で過ごしており、無我夢中でビジネスをやってきました。そんな私の今の趣味は、筋トレやサウナです。それと週末は2人の子どもたちと一緒に遊ぶことが、仕事への活力となっています。
Q2. 御社の特徴について教えてください
堤社長:私自身が、シダックスコントラクトフードサービス株式会社(以下 シダックスコントラクトフードサービス)の社長に就任してまだ1年生ですので、自社とはいえ偉そうに語りづらい面もありますが、あえて言わせていただくと、弊社はこの業界のパイオニアであるということです。65年前に会社が立ち上がり、社食の領域においても、カフェテリア形式を導入したということは、業界に非常に大きなイノベーションをもたらしました。
現在、弊社では全国の社食はもちろん、給食業界においては様々な業態で約 1800 店舗弱くらいの施設を運営していますが、それだけの施設を運営できる運営力や、食材の調達から物流までを担っていることは、本当にすごいことです。そしてそれを365 日毎日提供するということはかなり素晴らしいと思っていますし、非常にリスペクトしています。
また、クライアント企業からの満足度の高さも特徴といえます。私は全国各地のクライアント企業の食堂に足を運んでいますが、年間の解約率もかなり低く現場のお客様の満足度が非常に高いと実感しています。これだけ多くの運営をしている中で、実際に満足していただいていて、解約されないというのは、非常に運営に力があるということだと捉えています。
現在「オイシックス」グループの本社が入居するビルの職域食堂である「雨晴食堂」を社食領域におけるフラッグシップ店として作っているのですが、ここでは親会社となるオイシックスの野菜約 20 種類ぐらいを食べることができるサラダバーを提供してます。また、オイシックスの業務用ミールキットでつくる「Oisix定食」というメニューなどを提供しています。
ここの場所は少し分かりにくいんですが、明らかにここを目当てに来てくださるお客さんが増えていて、かつその滞在時間が長いんですよ。仲間と一緒に楽しむ場になっている感覚がすごくあって、かつ「野菜が美味しい」という声がすごく多くて、そこはやはりオイシックスと一緒になったからできることだし、明らかな手応えも感じてます。
ご飯が美味しくて、ランチが楽しかったら会社に来るのは楽しいはずですよね。「雨晴食堂」での取り組みはその1 つのヒントになっています。それは明らかな手応えとして感じていますし、メンバーもそれを感じているので、これをどんどん展開しようと考えています。
このように、本来強かった運営力プラス、オイシックスの新鮮な食材が加わることの相乗効果がこれからの弊社の強み、特徴となっていくでしょう。

Q3. 社食業界の今後について、どのようにお考えですか?
堤社長:「社食業界」だけでなく「給食業界」も一緒に考える必要があると思っていて、 それぞれのトレンドや課題があると思っています。
まず「社食」の領域でいくと、コロナが明け、企業が社員に出社をしてもらってリアルのコミュニケーションを増やしたいというニーズが明らかに増えています。実際、リモートワークより出社したほうが生産性が上がることは証明されてるので、そういった意味では社員が会社に来たくなるということを企業の経営課題として抱えてらっしゃるということはすごく感じていますので、そのためにコンテンツやサービスが必要で、それが「社食」の領域に関わっています。社食が楽しいとか料理が美味しいとか、みんなでコミュニケーションが取れるというような所としての「社食」の役割・ニーズは確実にあると思ってます。
もう 1 つが、昨今の「原材料の高騰」と、「人件費や人不足」の問題です。これは給食業界に限らず外食とか様々な業態の問題ですが、これらは今までのやり方に限界が来ているためでしょう。これまでのような、それぞれの施設でそれぞれメニューを考えて、カスタマイズして提供するっていうのが成り立たなくなってくると思っていて、それに対して満足してもらい、かつコストも抑えなければいけないということを考えていかなければと思っています。
この問題に対して「雨晴食堂」では、運営費用を削減しながら満足度の高い食事提供ができる「タイパ給食」を提供しています。現場でゼロから作るのではなく、本部がメニューを策定し、それに対してある程度仕込みをしたオイシックス食材を活用することで、現場での作業の省人化を実現しています。そうすることで、今まで 5 人、10 人必要だったものを、4人とか8人で回せるようになります。従来より20〜30% 少ない人数で提供できる分、材料費にきちんとかけて付加価値の高いものを提供する。そうすることで人手不足とお客様の満足度、食材費の高騰といった問題を解決できるわけです。
このような取り組みを我々は提供していきますが、最近では直営で食事を提供しているようなところから、「取り扱わせてもらえないか?」というお話もいただいたりもしていますので、業界全体的にもそういう流れになっていくのではないでしょうか。
-貴重なお話をありがとうございました。
(聞き手/社食ドットコム編集部)
会社名 | シダックスコントラクトフードサービス株式会社 |
所在地 | 東京都渋谷区神南1-12-10 シダックス・カルチャービレッジ |
公式WEBサイト | https://www.shidax.co.jp/ |