【新春特別企画】社食運営企業トップインタビュー/「どうなる? 2023年の社員食堂業界」【魚国総本社 田所伸浩社長編】

昨今は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出社制限やテレワークの採用が進み、社員食堂そのものの必要性すら問われる時代となっています。しかし不特定多数との接触がないことや栄養バランスの良さ、社員同士のコミュニケーションの場となるなど社員食堂のメリットについてはあまり語られることがなく、社員食堂を有していない企業の方々には、その実情が届いていないことが懸念されます。

このような中、社食ドットコムでは、社員食堂運営会社のトップの方に「社員食堂の良さ」を発信していただき、社員食堂の必要性を社員食堂を有していない企業の方々に理解していただき、社員食堂の市場拡大につなげることが業界全体のメリットに繋がると考えています。

そこで、社員食堂運営業界にて長らく活躍されている社員食堂運営会社のトップの方を直撃取材。「トップが語る、2023年の社員食堂業界」をテーマとして、社員食堂のメリットはもちろん、社長の人となりから今後の社員食堂がどのようになっていくのか? などについてお話をうかがいました。

今回は、大阪市に本社を構える魚国総本社の田所 伸浩社長です。

【プロフィール】
田所 伸浩(たどころ・のぶひろ)
株式会社魚国総本社 代表取締役社長。
1978年3月:同志社大学卒業後魚国総本社に入社/1994年2月:代表取締役副社長/2003年8月:代表取締役社長現在に至る。2014年5月1日、創業100周年 新経営方針「3S経営」を制定し、「お客様、従業員、社会を元気で幸せにし、選ばれ続けるHuman Company」を実現することを使命とし、多様なお客様のニーズにおこたえし、従業員と共に社会に貢献し続ける企業を目指している。

【会社概要】
株式会社魚国総本社
創業1914年、設立1953年。資本金2億8千6百万円。売上615億円(2022年3月期/魚国フードサービス北海道合算)。従業員数17,543人。事業所数 2,528ヶ所(2022年3月時)。
日本の給食業界の草分けとして、一世紀にわたり、お客様とともに歩みつづけてきた。健康創造企業の実現に向けて第二世紀へ/長い歴史のなかで時代の変化やお客様のニーズにお応えしながら事業を展開し、総合給食サービス企業として成長してきました。当社のブランドスローガンである『おいしいをもっと。すこやかをずっと。Design food for your life』を追求し、これからも魚国総本社にしかできない驚きや感動あるサービスを提供できるよう、日々努力を惜しむことなく挑戦し続けている。

本社所在地:大阪市西淀川区竹島4-1-28
Webサイトアドレス:https://www.uokuni-s.co.jp/

物心着く頃から「お客様第一」を学ぶ

Q1. 社長の経歴や人となりについて教えてください

当社は1914年に創業しましたので、今年で創業109年となります。創業者である田所邦雄が最初は屋号の通り魚を商う仕事からスタートして、次に仕出しの仕事を行い、その後に企業の中で食堂を運営する給食の仕事を始めています。

 私は三代目ということになるわけですが、物心着く頃から魚国という会社があり、グループ企業には大乃やという料亭がありましたので、初代が朝は魚国で働いて、夜は大乃やで仕事するという環境で育ちました。とにかく家族は仕事をしているというのが当たり前でした。邦雄からは、お客様を大切に思うこと、それはどういうことなのかを絶えず聞かされ、その背中をずっと見て育ちました。

 大学卒業後にニューヨークで外食事情を学び、帰国してからはずっと魚国総本社の事業に携わっています。入社後は、お客様に美味しいものを食べていただき喜んでいただく、お客様第一ということを、初代だけでなく二代目の前社長からも教わりながら、企業人として成長してきたと思います。

株式会社魚国総本社 田所伸浩社長

食事を通じてお客様の健康を作っていく

Q2. 御社の特徴を教えてください

当社は1927年大阪の丸紅商店様の地下の食堂を第1号として、社員食堂事業をスタートしています。その後、我々が全国に拡大できたのは、当時のお客様の企業の皆様が全国に展開をされたことによります。「北海道に工場を作るから食堂をお願いしたい」「九州支社の社員食堂も提供してほしい」というように声をかけていただきました。従って、お客様もその地に根付かれ、我々もその地域に根付いて仕事しなければならないという流れの中で、「その地域で頑張らないといけない」という意識もまた、強く根付いていったと思います。

 当社は、2003年に魚国総本社として合併するまでは、地域ごとに会社が違う分社制を取っておりましたが、地域に育てていただく地域密着という考え方が強いことは、特徴の一つだと思います。

 全国拡大とともに、事業分野も社員食堂から様々な食の分野に広がってきて、今では幼稚園・保育園から小学校・中学校・高校・大学、そして病院や福祉・シルバーというように、人の一生のすべてのステージに関わる仕事をさせていただくようになっていること、これも当社の特徴です。そういう意味でも我々の仕事は非常に大切な、命を、健康をお預かりする仕事であるという使命感を持って、日々の業務に取り組んでいます。

社員食堂は企業にとって大事な施設

Q3. ウイズコロナ、アフターコロナにおける社員食堂のメリットについて教えてください

キーワードは、ウェルビーイング、コンティンジェンシー、長い視点で言えばサスティナビリティーだと思います。コロナということで、我々は経験したことがない局面に直面したわけですが、安全で安心できる食事を毎日おいしく食べられることが、どれだけ大切で、しかもそれが簡単なことではないことを、再認識させられたと思います。

 そういう環境の中で、まずウェルビーイングということ。3年間にわたり人と人の接触に制限があったことは、知らず知らずということも含めてストレスを募らせることにつながっているのではないでしょうか。社員食堂の重要性・必要性として、「仕事の時の気持ちの切り替え」という意味での、憩いの場であったり、リフレッシュの場であったり、コミュニケーションの場であることがあげられます。当社では、毎年クライアントアンケートを実施していますが、コロナ禍の2020年、2021年、2022年の3年間における社員食堂の満足度の評価はむしろ改善しており、食事以上の価値を認めていただいているお客様も多いと感じます。

 次に、コンティンジェンシー対応。「お客様、当社の双方に感染者が出た時はどんな対応をして、どんな食堂運営をするのか」ということについて、お客様としっかり話し合いました。「従業員が感染し工場の生産に支障がきたすような状況になっても、こういう食事を提供してほしい」とか、「当社の従業員が半分になったとしても、こんな方法だったら2週間は運営ができます」というように、いろいろなケースを想定し、お客様も当社も対策を考えました。その結果、食堂を止めることなく運営できることがわかり、お客様の不安を払拭することができたのです。これは、社員食堂でなければできなかったことだと思います。

 また、歴史が長いということもあり、当社は、伊勢湾台風(1959年)、阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)などの災害を経験し、支援活動を行いました。その経験を活かして、災害などが発生して食材の流通が停止した場合にも全国で約3万食の食材を備蓄し、被災した事業所を国内多数の拠点が支援する体制を整えています。

 そして、サスティナビリティーです。お客様と向き合うことによって、お客様にとって最も適した社員食堂の在り方を常に追求して、改善を継続していくことができます。お客様の求めるニーズはますます多様化し、運営会社はますます対応力を高めなければなりません。当社では、創業来培ってきた「お客様第一」や「地域に育てていただく」という思いを大切にして、お客様の声をしっかり受け止め、これからの時代に最適な社員食堂の実現に向けた改善活動に取り組んでいきたいと思います。

ウエルビーイングとデジタル化

Q4. 2023年の社員食堂業界の展望についてどのようにお考えでしょうか

ウェルビーイングやSDGsに対する社会からの要請が更に高まり、デジタル化も進む一年になるのではないでしょうか。コロナに加えて、ウクライナ侵攻、食糧や原料の供給不足、世界的な物価高、正に2022年は激動の一年でした。このような不透明で不安定な情勢の中、心の健康も含めたウェルビーイングやSDGsへの希求が、社員食堂業界においても一層強まると考えています。

 ウェルビーイングにとって大切な場所として、社員食堂はしっかりと役割を果たさなければなりません。特別新しいことをということではなくて、本来の目的である「楽しさ」「嬉しさ」「快適さ」「美味しさ」「コミュニケーション」など、有益な時間と場所を作り上げていくということが求められるだろうと思います。ストレスのない時間と場所作りには、デジタル化、DXの有効活用ということを更に推進する必要性も感じています。

サービス業におけるデジタル化というのは省人化が目的ではなく、より高いサービスを提供するための施策だと考えています。サイネージとかスマホを使って、リアルタイムに情報を提供するというようなことはできていましたが、「スマホから直接ご意見をいただく」ということもできるようになっています。
コロナの前から「お昼の食事は何を食べて、何キロカロリーを摂って」というようなことが分かるようになってきていますが、今はそこに朝晩の自分のデータを入れることで、一日の食事管理ができます。その一日が一か月になり、一年になるということであれば、きちんとした健康管理がそこでできることになります。これもデジタル化が進むことによって、変わってくるだろうと思います。

 SDGsに向けた取り組みとして、当社では2022年9月に関西の幼稚園・保育園の園児を対象に「みらいの給食週間」という啓蒙活動を実施しました。これは園児たちに食育を中心とした動画であったり、メニューの提供であったり、絵本の配布であったりということで、円谷プロダクション様、消費者庁様と一緒になって実施したものです。当社の特徴である幼稚園・保育園からシルバーまでのライフステージにおける給食の提供で、そのスタートとなる小さな子どもたちへの啓蒙活動によって、これからの人生における食事に対する正しい認識を身に着けてほしいとの思いから、実施したものです。

 ウイズコロナの状況下では、喫食数の乱高下によってフードロスを増加させてしまうという事態が生じてしまいました。フードロスに対応することも大きな課題の一つです。その対策においても、DXを活用することが可能です。利用者様との双方向の情報交換で、メニューを提供したり、食事予約の情報を収集するなど、ニーズやサービスの情報化がますます進み、その対応が求められることになると思います。

 このような展望をしっかりと念頭において、より高いサービスを提供するための進化を続けていきたいと思います。

-貴重なお話をありがとうございました。

(聞き手/社食ドットコム編集部)


会社名株式会社魚国総本社
所在地大阪市西淀川区竹島4-1-28
公式WEBサイトhttps://www.uokuni-s.co.jp/

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