Q3. 一般的な外食やコンビニ弁当などと比べ、栄養バランスやリフレッシュ、感染症対策にもすぐれていると考えられる「社員食堂の良さ」が広く伝わらないのはなぜでしょうか?
黒谷 我々のような社員食堂運営会社は「すでに社員食堂がある企業様」に対してのアプローチがメインとなっています。営業には数字目標があるので社員食堂のない企業様への積極的に営業活動については優先順位の関係もありなかなか目が向いていませんでした。
しかし新規開拓という意味でも将来的に重要になってくると感じております。
Q4. 今後の“社員食堂”はどのような方向に向かっていくと考えられますか?
黒谷 今後の社員食堂は多極化していくのではないでしょうか。
日本はものづくりの国であり、工場や生産現場などでは作るメニューや現場の様子は多少は変わるでしょうが、そういった場所での社員食堂はそんなに大きく変わらないのではないでしょうか。
一方、大きく変わるのは、オフィスの社員食堂です。これから「テレワーク」だとか「リモートオフィス」というような新しい働き方を迎える時代にこれからなっていくことです。これからは人が集まるという機会が非常に少なくなるのではないかと考えており、そういった時代においては今まで本社に何千人と集まって1日数千人も利用されていた社員食堂でも、今後は食事の量が100食だとか200食とかという形で極端に減っていくことが考えられます。
しかし、このように極端に利用者が減っていく中でも社員食堂というのは残っていく。そして今度はその100食のクオリティレベルの変化が大きくなっていく。このように「個」の対応をしていかなければならない社員食堂がたくさん出てくるではないか、ということです。
また福利厚生担当の方から最近聞こえてくる声として、
「テレワークが始まって、食事による社員の健康管理がなかなかできない。たとえば体重が増加しているとか、血圧が増加してるといった、今までであれば食堂でカロリーや塩分などを制限したり調整したりしていたことができなくなった。その管理を今後どう行なえばよいのか」
というものがあります。やはり我々も「個」に対しての期待されている発信をしていかなければいけないと考えています。そのためにもまずは健康的なメニュー、食材の提供、そして将来的にはデリバリーなども視野にいれつつ啓蒙活動も行なっています。
そして注目しているキーワードとして「SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」があります。弊社もSDGs経営を推進しており、世の中に広くSDGsの理解が進んで行くと、社員食堂でも「売り切れても当然」という時代が来ると考えられます。今まで産業給食では「福利厚生の均一」という観点から「売り切れは悪」と言われていましたが、過剰な在庫を抱えて売り切れに備えるのではなく、必要十分な食材で対応し、それがフードロスの削減に寄与することを企業側も受け入れていくのではないでしょうか。
また、多様性への対応となると、工場では海外から研修生が来るケースがあり、海外からの研修生の食事も多様性の対応となります。さらに給食現場で働く従業員の多くは女性ですので、「女性活躍」という面でも給食事業はSDGsに沿っているといえます。
このようにこれからの社員食堂はSDGsに沿った考え方がひとつの指針となっていくでしょう。
敬称略 社食ドットコム編集部 2021.06
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