
讃岐釜揚げうどん 「丸亀製麺」の運営で知られる株式会社トリドールホールディングスは、1985年兵庫県加古川市において焼鳥居酒屋「トリドール三番館」の創業が起源となります。その後90年に有限会社トリドールコーポレーションを設立、95年に株式会社トリドールへ組織変更、そして2016年には持株会社体制移行に伴い現在の株式会社トリドールホールディングスに商号変更を行ないました。
「丸亀製麺」をはじめ、グループ傘下に焼鳥ファミリーダイニング 「とりどーる」、とんかつ・かつ丼「豚屋とん一」、ハワイアンカフェ「コナズ珈琲」などを有する同社の19年3月期の年商は約1450億円。これは国内の外食上場企業での中で第8位、対前年売上比伸び率で第3位となっています。海外進出も国内1,123店舗、海外602店舗の計1,725店舗(19年9月末現在)を展開しているほか、入社式をハワイで行うなど、業界内外で注目の企業となっています。
そんな同社は19年9月に品川区に複数あった拠点を集約し、本社を神戸市から東京・渋谷区へ移転。同時にいままで無かった社員食堂を初めて設置しています。
2019年3月に竣工した地上21階、地下1階、高さ106.9m、延べ面積46,954m2のオフィスビル「渋谷ソラスタ」。 渋谷駅(JR、副都心線、半蔵門線等)から徒歩6分。 19階と20階の2フロアにトリドール社は入居。2019年9月に本社を神戸から東京渋谷に移転しました。 こちらは1985年に創業した際に、栗田社長が手書きで作った看板。 1号店なのに3番館とあるのは、将来3店舗を経営することを目指したことから。 年商80億円だった2006年当時、栗田社長が「10年後には売上1000億円を達成させよう」と書き込まれました(2016年度の売上は1017億円を達成しています)。 19階の執務フロアはフリーアドレスとなっており、カフェのような空間で約150〜200名が働いています。天井を抜いて開放感と同時に特別な空間づくりを演出しています。 ハンモックやローソファなどで、寝転びながら仕事をすることも可能。どのエリアも業務であれば何をやってもいいそうです。 役員の席は固定されています。旅行好きな役員は地球儀や旅行鞄でスタイリングされるなど、それぞれの個性を表現してコミュニケーション創出を狙っているそうです。 19階の東西に、それぞれベッドが用意された睡眠ルームが3部屋と、救護室が用意されています。 中階段から20階に上がってみましょう。東側には会議室が10部屋あり、壁面には社員の創造性を刺激するため、多くの絵画が飾られています。 絵画は社員のアートシンキングを育成するための仕掛けのひとつ。約2ヶ月で入れ替えられるそうです。 会議室横にある“ひなたぼっこ”エリア。憩いの場兼会議室利用待ちなどのサブエリアです。高さの感覚がマヒしそう・・・。 こちらは朝礼や内定式、入社式などで使用される大会議室。パーテーションで2部屋に分割できます。 社員の興味を喚起するような書籍が並べられているライブラリーコーナー。オセロやけん玉など頭のリフレッシュにつながるオモチャも用意されています。 それではトリドール社初の社員食堂「31cafe(さんいちかふぇ)」をご案内しましょう。 名前は本社の入居しているビルの地番が由来となっています。 ランチの営業時間は11時30分から14時。その時間内であれば社員は自由に利用できます。以前は社食がなかったため、お弁当や外食で済ませていたそうです。 食堂の広さは800㎡。座席数は150 席。社員食堂でも仕事ができるため、執務フロアでもあります。 運営は食堂運営会社ではなく、自社社員の中から専属業務として行なっています。自社が外食を運営する企業なので、メニュー開発もお手のもの。 メニューは大別して“ビュッフェ”、“麺類”・“丼類”の3種類が毎日提供されています。 ビュッフェは主菜が1つか2つかで値段が変わります。 メニューラインナップには、和食・洋食・中華・多国籍料理に加え、トリドール運営業態のメニューも提供しています。 容器はさとうきびでできた非木材紙のバガスを使用。森林保護やCO2削減につながり、温暖化防止に貢献しています。 空間としては“居心地の良さ”を重視。様々なタイプの椅子やソファを、座席同士の距離が近くなりすぎないよう配置されています。 ランチタイムは12時半ぐらいがピークタイムだそうですが、「日によってバラバラ」とのこと。 ランチ時に19階から20階に上がってくるときに、偶然一緒になった他部署の人と盛り上がって一緒に食べようということになることも多いとか。 こちらは日当たりが良過ぎてロールカーテンが下げられている窓側のカウンター席。Wi-Fiと電源がいたるところに設置されています。 【Today’s 丼】 【Today’s 麺】 【One Plate】魚のソテー〜トマトとバジルのソース〜(主菜)と準主菜、ご飯、副菜2種、スープ) 無料のドリンクコーナー。コーヒーやフレーバーウォーターが自由に飲めます。 【voice】「店舗で使ってる食材などを利用しているのがいいなと思います。また、管理栄養士さんが作ってくれているので、健康のため週に2、3回は食べたいです」 【voice】「同僚と、社内の知人を連れてきて食べたりしているので、どんどん知り合いの同僚が増えていきます。社食のおかげで仕事が円滑にすすむようになっていきます!」 【voice】「安くて美味しいし、いろんな種類が選べてしかもすぐ食べられるので時間の節約になり、休憩時間もしっかりとれるのでいいことづくめです」 【voice】「以前は外出するのが面倒でお昼抜きもありましたが、社食のおかげで毎日食べるだけでなく、普段食べない魚も食べるようになりました」 都心の眺望が一望できるので、ランチタイムは窓側が人気。こちらは渋谷から新宿方面の景色です。 31cafeのロゴは、「森が火事のときに、我先にと逃げる生き物の中、ハチドリだけは『できることをやる』と一滴ずつ水を火に落としていたという話で知られるハチドリ。
“丸亀製麺”を運営するトリドールの社員食堂に「うどん」がない理由とは?
今回の移転で初めて社員食堂を設置したトリドールホールディングス。社員食堂“31cafe”のスタッフは、管理栄養士でありカフェ業務を行なっていた女性社員2名とパートスタッフ5名。食堂運営会社に任せるのではなく、飲食業のノウハウを持つ自社で運営しています。
メニューづくりは女性社員が担当。たとえば「クミンを使ったフランス料理」など、毎日一品は社員にとって馴染みが薄い料理が提供されるようになっているのですが、これは、社員食堂横にあるライブラリーや壁に飾られている絵画と同様に、社員に常に新しい刺激を与えるように考えられているためです。このような取り組みは自社運営だからこそ行ない易い施策といえるでしょう。
また、社員食堂が新設されたことは社員にも多くの好影響を与えています。利用している社員からは「移動に時間がかからないため、ランチタイムにしっかり休憩できるようになった」、「管理栄養士が栄養バランスを考えた料理が出るので健康的」、「普段知り合わない社内の人とつながりやすくなった」といった声が多数聞かれました。
本社移転前は、自社が運営する“丸亀製麺”のフェアの告知ポスターなどが社内に掲示されていたとのことですが、現在は執務エリアでも社員食堂でも「丸亀製麺」の文字を見ることはなく、取材日の提供メニューにはうどんもありませんでした。
「社内で“丸亀製麺”の文字を見かけませんが?」とうかがうと、
「弊社では丸亀製麺以外のブランドも扱っていますし、社員に対しての新しいブランディングが根底にあります。社員食堂を含め、新しいオフィスは『我々はトリドールという会社のイメージをこのように変えていくんだ』というメッセージを込めているのです」(同社ワークプレイスマネジメント課 西島ブランドマネージャー)とのこと。
昨今、就職先を考えるとき、働く場所としてまず先進的なオフィスを考えるケースが増えていますが、そのような企業と同じ土俵に上がるためにも、このようなオフィス環境づくりが必要と考えており、本社を渋谷に移したのもそういった理由も含まれているそうです。
一般的に従来型の社員食堂は「食べるためだけの場所」というケースが多く、施設もメニューも画一的な要素が大きかったのですが、昨今は同社のようにさまざまな意味をもたせた複合施設へと舵を切っている企業が増えています。
これは、社員食堂が単なる食事をするだけの場所に止まらず、企業カラーを伝える場所となっており、リクルーティングにも好影響を与えています。
トリドールホールディングスの社員食堂も、単に食事を摂るだけでなく、社員の創造性を刺激するメニューや空間など、まさに企業価値を高める社員食堂となっていました。
東京都渋谷区道玄坂1-21-1渋谷ソラスタ 19階
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