讃岐釜揚げうどん 「丸亀製麺」の運営で知られる株式会社トリドールホールディングスは、1985年兵庫県加古川市において焼鳥居酒屋「トリドール三番館」の創業が起源となります。その後90年に有限会社トリドールコーポレーションを設立、95年に株式会社トリドールへ組織変更、そして2016年には持株会社体制移行に伴い現在の株式会社トリドールホールディングスに商号変更を行ないました。
「丸亀製麺」をはじめ、グループ傘下に焼鳥ファミリーダイニング 「とりどーる」、とんかつ・かつ丼「豚屋とん一」、ハワイアンカフェ「コナズ珈琲」などを有する同社の19年3月期の年商は約1450億円。これは国内の外食上場企業での中で第8位、対前年売上比伸び率で第3位となっています。海外進出も国内1,123店舗、海外602店舗の計1,725店舗(19年9月末現在)を展開しているほか、入社式をハワイで行うなど、業界内外で注目の企業となっています。
そんな同社は19年9月に品川区に複数あった拠点を集約し、本社を神戸市から東京・渋谷区へ移転。同時にいままで無かった社員食堂を初めて設置しています。
“丸亀製麺”を運営するトリドールの社員食堂に「うどん」がない理由とは?
今回の移転で初めて社員食堂を設置したトリドールホールディングス。社員食堂“31cafe”のスタッフは、管理栄養士でありカフェ業務を行なっていた女性社員2名とパートスタッフ5名。食堂運営会社に任せるのではなく、飲食業のノウハウを持つ自社で運営しています。
メニューづくりは女性社員が担当。たとえば「クミンを使ったフランス料理」など、毎日一品は社員にとって馴染みが薄い料理が提供されるようになっているのですが、これは、社員食堂横にあるライブラリーや壁に飾られている絵画と同様に、社員に常に新しい刺激を与えるように考えられているためです。このような取り組みは自社運営だからこそ行ない易い施策といえるでしょう。
また、社員食堂が新設されたことは社員にも多くの好影響を与えています。利用している社員からは「移動に時間がかからないため、ランチタイムにしっかり休憩できるようになった」、「管理栄養士が栄養バランスを考えた料理が出るので健康的」、「普段知り合わない社内の人とつながりやすくなった」といった声が多数聞かれました。
本社移転前は、自社が運営する“丸亀製麺”のフェアの告知ポスターなどが社内に掲示されていたとのことですが、現在は執務エリアでも社員食堂でも「丸亀製麺」の文字を見ることはなく、取材日の提供メニューにはうどんもありませんでした。
「社内で“丸亀製麺”の文字を見かけませんが?」とうかがうと、
「弊社では丸亀製麺以外のブランドも扱っていますし、社員に対しての新しいブランディングが根底にあります。社員食堂を含め、新しいオフィスは『我々はトリドールという会社のイメージをこのように変えていくんだ』というメッセージを込めているのです」(同社ワークプレイスマネジメント課 西島ブランドマネージャー)とのこと。
昨今、就職先を考えるとき、働く場所としてまず先進的なオフィスを考えるケースが増えていますが、そのような企業と同じ土俵に上がるためにも、このようなオフィス環境づくりが必要と考えており、本社を渋谷に移したのもそういった理由も含まれているそうです。
一般的に従来型の社員食堂は「食べるためだけの場所」というケースが多く、施設もメニューも画一的な要素が大きかったのですが、昨今は同社のようにさまざまな意味をもたせた複合施設へと舵を切っている企業が増えています。
これは、社員食堂が単なる食事をするだけの場所に止まらず、企業カラーを伝える場所となっており、リクルーティングにも好影響を与えています。
トリドールホールディングスの社員食堂も、単に食事を摂るだけでなく、社員の創造性を刺激するメニューや空間など、まさに企業価値を高める社員食堂となっていました。
東京都渋谷区道玄坂1-21-1渋谷ソラスタ 19階
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