社食ドットコムが(一社)日本能率協会と行なったアンケート調査によると、「社員食堂を有している企業」では約90%超の社員が「社員食堂があった方が良い」と回答し、社員食堂の価値を認めている一方、「社員食堂を有していない企業」の社員で「社員食堂があったほうが良い」と回答しているのは約60%に過ぎませんでした。このことから、「社員食堂を有していない企業には、社員食堂の良さが十分知られていないのではないか」と推測されます。
新型コロナウイルスの収束がなかなか見えてこない昨今、社員食堂各社は社食業界の市場拡大のためにも、社員食堂の良さを「社員食堂を有していない企業」にも広くアピールする必要があると考られます。そこで社食ドットコムでは、企業の枠を超えて社員食堂の良さを伝えていただけるよう、さまざまな社員食堂運営会社の方々に社員食堂のメリットや今後の方向性について、お話しをうかがっています。
今回は東京・銀座に本社を構える銀座スエヒロカフェテリアサービス株式会社の磯部長にお話をお伺いしました。
(聞き手/社食ドットコム編集部:文中敬称略)
【プロフィール】磯 幸治(ISO,Koji) 銀座スエヒロカフェテリアグループ 商品企画部 執行役員部長
専門学校を卒業後イタリアンレストランやダイニングバーなど数々の飲食店で調理・マネジメントを経験。
2002年銀座スエヒロ入社、社員食堂の事業所責任者を数店舗経験後、営業本部に配属となり新規事業所の開業や各事業所の運営改善に取り組む。現在、企業・福祉施設など銀座スエヒログループ全体のメニュー開発を行なっている。
【会社概要】銀座スエヒロカフェテリアグループ
「ビフテキの銀座スエヒロ」をルーツに、1956年に企業給食を開始、その後学校給食、保育園幼稚園、福祉施設に事業拡大。銀座スエヒロの暖簾を大切に本格的なレストランの味を関東圏、関西圏で展開している。
本社所在地 東京都中央区銀座6-14-20 / 従業員数 1,600名(連結)/ WEBサイトアドレス http://www.ginzasuehiro.co.jp
Q1.最近の社員食堂を取り巻く環境について教えてください
磯 リモートワークやオフィスの分散など働き方の変化に伴い、人が集まる社員食堂についても大きな影響を受けています。オフィスに出社する社員様が減り、規模の大きな食堂でも利用率8割減、閉鎖した食堂もある状況です。今後コロナウィルスが終息してもこの働き方の変化は継続していくと思われるため、その中で時代の変化と、企業様の考え方の変化に柔軟に対応・または提案する必要があるでしょう。
新しく開業するオフィスビルでは、固定化した社員食堂という施設を設置しない企業様も今後さらに増加する事が想定されます。そこにコンビニやカフェチェーンが参入している中で、設備投資への負荷の低いケータリングでの食事提供など新しい取り組みを行なっています。
Q2.社食ドットコムでは「社員食堂を有していない企業の方は、社員食堂のメリットを十分把握できていない」と捉えています。そこであらためて「社員食堂のメリット」について教えていただけますか?
磯 社食のメリットは大きく3つあると考えます。
- 「安心、安全な食事の提供」。これはコロナ禍でさらに重要となったポイントで、社員食堂はコロナ前から食中毒を出さない為に徹底した衛生管理をしており、企業様の社員の安心、安全な食事提供をしたいと思う気持ちと一致しています。
- 「栄養バランスの良い食事の提供」。社員の方に食による健康管理をしたい企業様の思いは各社共通しています。ある企業では市と協力し健康経営の取り組みを行ない、朝食チャレンジやダイエット応援プロジェクトなど多彩な健康増進活動に社員食堂として柔軟に協力してきました。
- 「コミュニケーションの場」。オフィスに出勤する日数が減り直接集まって話すことが少なくなり、組織としてのコミュニケーション力は希薄となります。コロナにより過度な密集状態は各企業様も避けていますが、新しいアイデアが生まれたり会話による心の安定に繋がると考えています。
大別してこの3つが社員食堂の大きなメリットであると言えるでしょう。
Q3.「社員食堂の良さ」が広く伝わらないのはなぜでしょうか?
磯 社員食堂の良さは見学などに来られる企業様を見ると、理解していると感じるが、福利厚生である食堂設置には大きくコストがかかります。働き方の変化により今後さらに食堂の必要性が問われるでしょう。社員食堂の良さを知らない人は未だ社員食堂に「安かろう悪かろう」イメージを持っている事が多く、コストをかける意義を見出せないのではないでしょうか。
しかしながら先ほど述べたように、栄養管理やコミュニケーションの場の一部として食堂は必要です。食堂設置のイニシャルコストが従来よりもかからない新しい食堂の提案も重要になるでしょう。またこれまで採用面以外で、外向けに積極的なPRはしてこなかったと考えます。
そういった事が広まらない理由の一つになっていると考えるが、今は発信しやすい時代になっています。情報発信の地道な取り組みをする事で広めていく必要があるでしょう。
Q4.今後の“社員食堂”はどのような方向に向かっていくと考えられますか?
磯 今まで述べてきたように、企業はコストの高い食堂は極力所有せず、働き方の変化により働く場所の分散をする方向に進んでいきます。社員の“食”は無くならないが、食事を提供するだけの食堂というだけでは不要とされてくるでしょう。安いだけの食事から安心安全な食事や本格的な本物の食事の需要が高まりますので、それに対応する力がないといけません。今まで以上に社員の健康増進のためのメニューやコミュニケーションの活性化が出来る空間作りも必要です。また食材費の高騰が続いていくので、いかに現場での作業が軽減でき、総合的にコストを下げれるかも必要となります。
時代の変化に対応していかないと、「社員食堂は要らないね」となるでしょう。たとえばSDGsもその一つです。当社でも江戸野菜を活用したメニューの提供など、企業様ニーズに応じて柔軟に取組をさせていただいています。