
本州最南端の和歌山県東牟婁郡串本町にある紀伊大島に位置しており、日本の空の安全を守る重要拠点である航空自衛隊串本分屯基地は、第5警戒隊が配置されています。この基地の任務は、日本の防空識別圏内で航空機を監視・追跡し、国の安全を保障することにあります。
同基地の存在は地域の安全と安心に寄与し、地域社会との連携や災害時の支援など、地元に根ざした活動も行なっています。この戦略的に重要な基地は、日本の安全保障体制の中心的役割を担い、今後も国の平和と安全のために活動を続けることが期待されています。
そんな串本分屯基地にある隊員食堂は、隊員の健康と士気向上に貢献し、地元食材やジビエ料理を使うなど地域への貢献や対外的なPR活動にも力を入れています。また航空自衛隊では唐揚げを「空上げ」と呼ぶとともに、各基地ごとにオリジナル「空上げ」を考案し「空自空上げ」とするなど、「食」を通じた様々な取り組みは、基地の運営においても重要な役割を果たしています。
それでは航空自衛隊串本分屯基地の隊員食堂へ行ってみましょう!
こちらが今回の訪問先、本州最南端の町、和歌山県東牟婁郡串本町の紀伊大島にある分屯基地です。 1944年9月に日本海軍が和歌山県の大森山にレーダーを設置したことが基地の発祥となります。 それでは早速入隊、いや入館させていただきましょう!
エントランスには関係上司の写真や様々な賞状、盾などが飾られています。串本分屯基地には中部航空警戒管制団に属する第5警戒隊が配置されています。任務は太平洋方面の対空警戒監視、そして災害への対応です。 こちらは建物内にある共済組合。防衛省共済組合では組合員の福祉の増進に資するため、各共済組合の特性に応じた福祉事業を行なっており、防衛省共済組合串本支部は表彰を受けています。 串本分屯基地オリジナルTシャツやキャップ、自衛隊手帳などが隊員向けに販売されています。 お菓子やドリンク類のほか、第5警戒隊オリジナルのお酒「紀勢鶴」も販売されています。 人気の自衛隊機カレンダーも販売中! 画像だけでも大迫力です! それでは隊員食堂に行ってみましょう! 奥の扉が隊員食堂の入り口です。 隊員食堂を担当する総括班総務人事係長木村1尉と基地業務小隊厚生班長市原1尉(左から)。場所柄太平洋の黒潮の影響を受けている影響か、お二人とも穏やかな紳士でした! 壁には提供メニューの由来や食事のルールなどが、ユーモアを交えて多数掲示されています。 これは何でしょう? 食堂内に掲示してある、視力検査表も兼ねた防衛省公認の秘密保全能力の検査表です。 食事の予算は一人あたり1日3食で約1,000円。合計摂取カロリーは1日2,400キロカロリーと定められています。串本分屯基地の隊員食堂での提供メニューのレシピ数は約300種類にも及びます。 一人につき一杯の小鉢も付いてきます。 薬味などもセルフで。ご飯や梅など地元和歌山県産を中心に近隣の 食材をできるだけ多く利用して地域の活性化に協力しています。 食堂では朝食、昼食、夕食と一日三食提供されます。 ご飯もセルフ。営内(基地内の寮)に住んでいる隊員は若年者が多く、ご飯を山盛りで食べる隊員も! 基地の外に住んでいる隊員でも、食堂利用者は単身赴任者や独身の隊員が中心に喫食しています。 他の基地のTシャツを着ている隊員も。 座席数は60席。ステーキ、海鮮丼、海鮮ちらし、刺身の盛り合わせ、空自空上げ、カレー、ジビエ料理などが人気。 感染症対策としてアクリル板が設置されています。 食事時間は、隊員が健康的なメニューを共に楽しめるだけでなく、午後からの職務を遂行するためのリフレッシュタイムでもあります。 こちらは来賓の方などが食事をする際に利用するスペースとなっています。 国が定めている国産水産物消費拡大の取り組みを、自衛隊でも行なっています。 【取材日のメニュー】鰤(ぶり)の刺身盛り合わせ(鰤、帆立) 毎月最終金曜日に提供される串本分屯基地オリジナル唐揚げ「紀州梅空上げ」(画像は提供) 「紀州梅空上げ」のキャラクター「おんどり 梅男」
鶏のかわいらしい顔とすごい筋肉のアンバランスが絶妙です!【管理栄養士】「色んな地域から来てる方が多いので、出身地のB 級グルメを入れてみたりしています。外食するところが少ないので、栄養も考えながらボリュームだったりみんなが食べたいようなメニューを考えています」 【VOICE】「人と人の絆というものが、我々の組織では必要になってくるところではありますので、そういう面においてもコミュニケーションがとれる食堂というのはすごいメリットの 一つと考えております」 【VOICE】「自衛隊の食堂は管理栄養士さんが朝昼晩すべてカロリーなど栄養価の計算をして提供してくださっていて、自衛官として体を動かすことによってその食がより健康に反映されてると思っています」 食べ終えたら下膳へ。自衛隊員は食後、自ら食器を片付けることで、規律と自己管理を実践しています。 壁の額には歌手の長渕剛さんからのメッセージが飾られていました。
まとめ
隊員の健康や士気を高め、地域に貢献する航空自衛隊串本分屯基地の隊員食堂
自衛隊では常に国家の防衛、また災害における国民への奉仕の精神を持っており、食事はそういった隊員の気力体力の根源を担っていると考えられています。そのためバランスの取れた美味しい食事を調理員や栄養士と一丸となり、提供しています。
2019年、自衛隊では自衛官の生理学的調査を含む調査研究により、最新の科学的知見に基づいて隊員に必要な摂取カロリーと栄養素を供給するよう、「栄養摂取基準」が見直されています。串本分屯基地においても現在は新たに設定された栄養摂取基準に合わせた食事が提供されており、隊員食堂で喫食することは、 自衛官として必要な気力・体力の充実を図れるというメリットがあります。
また、航空自衛隊においては「より上を目指す」という意味も込めて、鶏の唐揚げを「空自空上げ」と名付け、毎月最終金曜日の「空自空上げの日」に各基地の隊員食堂にて提供しています。串本分屯基地においては地元和歌山産の「南高梅の紀州梅干し」を衣に練り込んだ「紀州梅空上げ」が提供され、梅の酸味と香ばしさが好評とのこと。航空自衛隊はこの「空上げ」にかなり力を入れており、公式WEBサイト内に「スペシャルコンテンツ」カテゴリー内に「空自空上げ」コーナーを用意しているほど。各基地のオリジナル空上げのレシピもありますので、興味がある方は閲覧してみてはいかがでしょうか。(航空自衛隊公式WEBサイト内 「空自空上げ」ページ )
串本分屯基地隊員食堂では、近隣を含む地元エリアの食材や、地元地域の農場を荒らす害獣として駆除される野生鳥獣をジビエ料理として積極的に提供しています。また「紀州梅空上げ」を串本町の名物料理にすべく、町内の食事処にレシピを開放していたり、中高生の職場体験イベントの際に、食堂で体験喫食を行なうなど、「食」を通じて地域にも貢献しています。さらに、残った料理についても衛生上問題がなければアレンジを施して次回の食事で提供するなど、フードロス対策にも取り組んでいます。このようにSDGsの観点からも同基地の隊員食堂の効率的な活動の様子が伺えます。
昨今の社員食堂は、「食べるだけ」の施設ではなくなってきていますが、串本分屯基地隊員食堂も同様で、隊員の健康、士気向上、PR、地域貢献などマルチな活用がなされている食堂でした!
和歌山県東牟婁郡串本町須江1383-12
記事の内容は取材および掲載時点の情報であり、最新の情報を反映・担保するものではありません。