厨房機器のトップメーカー“タニコー”の社長に聞く!  逆境をあっという間にチャンスに変える“追い風経営”とは

ピンチをチャンスにかえる“追い風経営”とは

Q3.毎年増収増益ですが、経営において重視していることは何でしょうか?

東日本大震災が発生したときのことをお話ししましょう。弊社でも一時期、福島の工場がすべて閉鎖となりました。

再開するまでは極めて時間を要することになりました。

当時は社員も体育館にダンボールを敷いて避難生活をしていましたので、小高工場の社員を住居を用意した上で、北陸の福井工場と北海道の岩見沢工場に転勤してもらいました。事情があって地元を離れられない社員には、福島で会社再開の準備をしてくれ、と。

この時、ある問題点が浮上したのです。

福島にある4工場が稼働停止となっていたため、その分他の工場の稼働率を上げようと実際に転勤してもらったのです。しかし、すぐに稼働率を上げるはずが、生産するために4ヶ月要してしまったのです。

震災発生から一年経ち、福島工場を再開できる準備が始められる状況になったのですが、ここでよく考えなければいけないことは、「なぜすぐに他の工場で生産を補えなかったのか?」ということです。

当時タニコーは日本各地に13箇所の工場がありましたが、これはリスク分散の考え方があったはずです。ところが長い年月が経つうちに、各工場が専門化して社員同士の工場間の交流が無くなってしまっており、リスク分散できていなかった。もしできていたらこの時も困らなかったはずですよね。

そうするとリスク分散できなかった原因は、地震でも津波でも原発でもなくて、タニコー自身だと言えます。そこで社員に「再開はもう一年待ってください。このまま元どおりに戻したらせっかく見えた問題点が見えなくなってしまうので、もう一年かけて今の問題点を克服した工場につくりかえたい」と伝えました。

最も会社が危機だと感じたのは、各工場が専門化しており、他の工場が何やっているのかわからないという状態であったことです。「この製品は我が工場で」というように、工場ごとに作っている製品が違い、いくら忙しくても他の工場にその製品を作らせない雰囲気があったため、「この製品は渡さない」という縄張り意識が根付いていたのです。

東京本社にあるショールーム

実際に地震がきて、みんなで協力しないと乗り切れないという事態となったときに、「自分たちの規模になったら、競争ではなく協調のほうがずっと効率がいい」ということに気がついたのです。

そこでひとつの工場が100%生産してはだめというルールを作りました。「フライヤーはこっちの工場がメイン」、「コンベクションはこっちの工場がメイン」、と製品ごとにメイン工場はありますが、「比率は9:1でも8:2でもいいから、必ず複数の工場で平行生産をするように」と。少しでも作っているといざというときにそれを増やすだけでよくなりますので。これを実施したところ、技術者同士の交流が始まり、違う工場の社員同士でも劇的に仲良くなりました。

また、小高工場はFMSセンターというコンピュータ制御する工場に変えることができました。これは24時間フル稼働の工場で、時間になると全員帰ってしまい、朝社員が出社したときには製品ごとにプラモデルのように展開されており、あとはそれを人間が仕上げるだけという工場にできました。

向かい風が吹いたら、その意味を考える

このように、経営において非常に重視していることは「プラスはプラス、マイナスもプラス」という視点です。確かに地震は起こり、津波も来た。想定外の原発の問題も発生しました。そこで初めてわかる問題点を克服していくことが、会社にとってとても重要なことでした。

たとえば外食産業を見てみると、日本は人口が現象し、高齢化していくことはわかっています。これは胃袋の数が減りサイズが小さくなることですので、マーケットとしては縮小していきます。これは一見マイナス要素です。しかし一方で、今の日本には外国からたくさん観光客が来ており、昔にはなかったマーケットができてきているわけで、外食産業もシフトしていけば大きく業績を伸ばす可能性がありますよね。

いずれにせよ、ある出来事があったとき、それはもしかしたら当社にとって吹き付けてくる北風であったとしても、それは受け入れるしかありません。そして自分に対して向かい風が吹いていればどうするのか? それは振り返れば良い。振り返れば向かい風が追い風に変わります。このように、起きている出来事に対して、「これはどんな意味があるのだろうか」「自分たちはこの状況で何ができるのだろうか」、「その意味を考えて新しいマーケットを作り出すことができないか」と捉えるのです。

震災のように会社の経営にとってはマイナスしかないように見えることでも、会社の問題点があぶりだされ、会社をよりよくするキッカケがわかったという良い点もあるわけです。それが逆に競争力になったり、次の未来が開けることになるのです。

タニコーはそうやってこれからも社会と関わり、より喜ばれる製品づくりを行なう会社でありたいと考えています。

社長経歴
谷口秀一(たにぐち しゅういち)
1961年東京都生まれ。武蔵野音楽大学を卒業後、株式会社DTSを経て、1986年株式会社タニコーテック入社、2006年タニコー株式会社に移籍、2010年社長就任。現在に至る。趣味はピアノ演奏。東京北ロータリークラブ会員、クラブ・プロスペール・モンタニェ日本支部会員。

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