2003年にオムロン株式会社から分社し設立されたオムロンヘルスケア株式会社。家庭用・医療用健康機器の開発・販売などを世界中で行なっています。同社の研究開発拠点は国内外2拠点、生産拠点は同5拠点、営業拠点は国内3拠点/海外19拠点を擁し、売上高1,120億円、従業員数3,758人(国内705人、海外3,053人)(以上2020年3月末現在/連結)を誇るヘルスケア機器カテゴリーにおけるグローバル企業です。その売上構成比は日本・24%、米州・19%、欧州・19%、中国・26%、アジア・パシフィック・12%(2019年度)となっているように、同社の製品は世界中の人に利用されています。中でも血圧計販売台数は累計2.5億台を超えて110カ国以上で使用され、多くの人の健康維持促進に寄与しています。
今回ご案内するのは同社国内唯一の生産拠点であり、世界各地の生産拠点のモデルとしてマザー工場の役割を担っている松阪事業所。血圧計や心電計などを製造するほかコールセンターの機能を有する施設として2020年3月に新棟が竣工され、その際に社員食堂もリニューアルされました。組織や個人の生産性が上がることやヘルスケアメーカーならではの施策を取り入れた社員食堂を実現しています。
今回ご案内するオムロンヘルスケアの松阪事業所(三重県)正門前にてお出迎えいただいたのはオムロンエキスパートリンクの岩瀬松阪事業所長代理(左)と総務企画部の松本さん。よろしくお願いします! 2020年3月に竣工された新棟。正面玄関前に植えられているのは、花言葉が「幸運、長寿、健康」というケヤキの樹。ヘルスケアメーカーならではですね。 建物横にある「敷島の小径(こみち)“オムロード”」。社員の健康づくりのづくりのためにつくられたウォーキングロード(約500m)。松阪市生まれの本居宣長の詩吟「敷島の歌」から日本の心と世界への発信を意味しています。 入り口で体温チェックを終え入館。
1階には同社製血圧計や、太陽光パネルを使った消費電力を表示するなど、施設の取り組みが展示されています。地域の子どもが工場見学ができるよう見学ルートが設計されており、「魅せる工場」として設計されています(新型コロナ感染対策として、フェイスシールド、マスク、インカムを使用してのご案内でした)。 構内は3つの事業棟からなっており、従業員は約500名。製造・修理部門や工法設計だけでなく、コールセンターなどもあり、製造と顧客サービスも兼ねた施設となっています。 それでは3階にある社員食堂へ向かいましょう。 新型コロナ感染対策の一環で延長された現在の営業時間は11:45〜13:30。1日の喫食数は約150食となっています。 エントランスにはカラフルなデジタルサイネージ。栄養素やカロリーなどもわかりやすく表示されているほか、イベント食・健康食などのメニューが詳しく紹介されています。 社員食堂に入るとまず目に入るのが、無用な混雑を回避するために床面に描かれたイラスト。直感的に理解できるので、初めての利用でもわかりやすいですね。 メニューは、450〜650kcalで栄養バランスの良いスマートミールを提供する「Healthy」のほか、「Main」「Curry」「Variety」「Noodle」の5種類。 この日のスマートミールメニューは大豆を使用したハンバーグ。松阪事業所の社員食堂はオプションを10個以上を含む最高の三ツ星のスマートミール認証事業者となっています。 「整腸」や「免疫力」など、それぞれ健康テーマを持つ「健康小鉢A」「健康小鉢B」やサラダ、デザートが日替わりで。この日のサラダは「オムロン式! 美人 コールスローサラダ」。 日替わりで毎日3種類提供されるパンも人気。松阪市内の障害者就労支援施設から購入しているクッキーも販売されています。 こちらは糖質の吸収をおだやかにする低GIスムージー(日替わり)。「おいしく野菜を摂取できる」と人気のオリジナル商品。 食堂運営会社の日本ゼネラルフード社の村山さん、中村さん、岩間さん(左から)。「はい、チーズ」(みなさん笑顔が素敵ですが、マスクでわかりません!) 社員食堂は陽当たりの良い最上階にあり、天井も高く開放的。全体の換気を空調で行うとともに、窓を開放するなど換気対策も行なわれています。 新型コロナウイルス対策として、座席を間引いて利用者間の距離を広めにすることや、不特定多数が触れるドレッシングコーナーの中止、箸類の提供方法の変更などが行なわれています。 食堂内にはシンボルツリーが配置されており、午前と午後の間に気分をリセットできる癒し空間となっています。 MY箸やMYスプーンを持参する社員もいるなど、個々人での衛生意識の高さが感じられます。 眺望の良い窓側のカウンター席は人気。松阪富士と呼ばれる掘坂山(ほっさかさん)を望むことができます。食堂営業時間以外はワークスペースとしても利用されています。 社員食堂での人気は「鶏肉」や「ラーメン」とのこと。野菜は小鉢を上手に利用して摂取している人が多いそうです。 定期的に開催される「地域フェア」や「イベント食」は社員の楽しみのひとつ。 無洗米や紙ストローの使用、食券予約販売によるフードロス削減等、社員食堂において多くのSDGsの取り組みを行なっています。 天気の良い日はテラスに出て食べる人も(この日は暑すぎて利用者はいませんでしたが)。屋上にはハーブが植えられており、成長したら食堂で利用することも。 この日のメニュー
【Healthy】ヘルシーハンバーグ(スマートミール)【Main】白身魚の南蛮漬け 【Variety】カラダを綺麗に ビーガンBOWL 【Noodle】本格ベトナム チキンフォー 【VOICE】「以前と比べカフェ風にリニューアルされました。リフレッシュできるし、メインだけでなく小鉢やパン、スムージーが日替わりなので嬉しいですね」 【VOICE】「元々健康なので健康維持目的のためにスムージーを飲んでいます。食堂には植物が置いてあり、仕事から頭を切り替えて無意識にリラックスできていると思います」 【VOICE】「社食のメニューは野菜が豊富で栄養バランスが良いので、毎日利用しています。社食から外の景色が見れるので、気分によって毎日座る席を変えています」 【VOICE】「自宅でたくさん食べたときは社食で調整しています。社食だと栄養バランスが整っているだけでなく、メニューも“映(ば)える”ものばかりで今風なので気分も高まります」 取材月は「オムゼロチャレンジ月間」。これは「脳卒中や心筋梗塞など高血圧が原因となる疾患をゼロにする」ことを目標に、社員全員が自分の血圧を測定するイベントで、社員食堂でも紹介されていました。 平常時から棟内には血圧計が設置されていますが、オムゼロチャレンジ月間ではこのように自分で血圧測定を行ないます。ヘルスケア企業ならではの取り組みですね。
まとめ
社員の健康向上だけでなく、SDGsや社会貢献を実現する新時代の社員食堂
世界各地にある同社の生産拠点などにオムロンヘルスケアの持つ技術を伝えるためのマザー工場としてだけでなく、企業文化を体現する施設として2020年3月にリニューアルされた松阪事業所。新棟新設にあたり、社員同士で「どのような事業所にするのか」というテーマに社員で出した答えが「Open」「Diversity」「Various」「Well-Being」という4つのキーワードでした。
その思想はもちろん社員食堂にも落とし込まれており、社員食堂をワークスペースとして活用したり、従業員の健康度を高めることで幸福度を向上することを目的として様々な取り組みを導入しています。
自社がヘルスケア企業ということから、「社員自らが健康であるべき」という考えのもと、そのための取り組みとして、厚生労働省の「生活習慣病予防その他の健康増進を目的として提供する食事の目安」や食事摂取基準2015年版を基本として定められている栄養バランスのとれた食事「スマートミール」の認証をオムロングループで最初に取得しているほか、健康的な食事提供やセミナーの実施、各人の皮膚のカロテノイド量を測定し、野菜摂取量を測定する機械を活用した「ベジリンピック」を行なうなど、楽しみながら健康への意識づけができるだけでなく、社員の家族にも社食のレシピを持ち帰れるよう提供するなど、社員食堂を通して、社員自身やその家族まで、健康を考えるきっかけづくりに取り組んでいます。
特に同社社員に向けた健康の取り組みとして、高血圧に起因する脳・心血管疾患の発症を世の中からゼロにすることを目指して「ゼロイベント」を掲げている。社内で従業員個々人で毎日血圧測定を行なったり、運動不足解消と健康やコミュニケーション活性化を目的にした事業所内の散歩道を歩く「オムゼロウォーク」を行なうなど、社員食堂と連動した取り組みは同社ならではの取り組みといえます。
また、社員食堂ではSDGs(持続可能な開発目標)にも取り組んでおり、余分な水を使う必要のない無洗米を使用したり、プラスティック製から紙ストローへ、地球環境に負担の少ない代替肉の使用や、オーダーを事前予約制にすることによるフードロス対策、フードマイレージ削減につながる地元食材使用、熱帯雨林の持続可能な管理を実践するレインファオレスト・アライアンス認証のコーヒー豆を使用する、などさまざまな取り組みを行なっています。
さらに社員食堂では近隣の障がい者就労支援施設より購入したクッキーを販売したり、新型コロナ禍の中、体温計300個を松阪市内の幼稚園・小中学校に寄付するなど、地域貢献も実施。
このような取り組みは、
「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」
という創業者の社憲に込められた想いが受け継がれていることの証左といえます。
ウェルビーイング、フードロス対策、地域貢献、社会貢献など、これからの社員食堂は「企業の福利厚生施設」という枠を超え、その企業の社員のためだけでなく、「持続可能な社会づくりのための施設」に進化しているといえます。
オムロンヘルスケア・松阪事業所の社員食堂は朝日に映える山桜のような存在として、これからの社員食堂の方向性を世界に発信していく社員食堂となっていくことでしょう。
松阪事業所
三重県松阪市久保町1855-370
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