今回ご紹介するのは、パナソニック サイクルテック株式会社。電動アシスト自転車のカテゴリでは国内販売シェア約46%(2019年)と、トップシェアを誇る自転車メーカーです。
創業者である故・松下幸之助氏は、五代自転車店での奉公時代に商売の基本を学び、1923年に砲弾型電池ランプを販売するなど、パナソニックグループの草創期は自転車用品によって築かれており、同グループにとって自転車業界は思い入れが深い業界です。戦争を挟み一時自転車製造を停止していましたが、1952年自転車業界への再参入を発表。相宅金属工業株式会社として創業後、1965年ナショナル自転車工業株式会社、2006年にパナソニック サイクルテック株式会社に社名を変更し現在に至っています。
同社では2020年8月に社員食堂をリニューアル。その際には従業員の意見を集約し、それまでは行なっていなかった取り組みなどを実現する場所として生まれ変わりました。それでは早速ご紹介しましょう。
大阪府の中河内地域に位置する柏原市西部にある、パナソニック サイクルテック株式会社。 本社の入り口を入るとすぐショールームがあり、懐かしい自転車から最新のe-BIKEまで展示されています。 創業者の松下幸之助氏は幼少時に自転車店に丁稚奉公しており、「自転車は私の心のふるさと」と語ったと言われています。 松下幸之助氏の「電器メーカーらしい自転車を」という声をもとに作られた業界初の電気自転車(当時はナンバー付き)。 1992年、同社のチームが自転車ロードレースのツール・ド・フランス最終ステージで優勝した際の自転車も展示されています。 構内には自転車の試乗路もあります。せっかくなので一番高級なe-MTBを見せていただきました(乗ると欲しくなるヤバさです)。 それでは4階にある社員食堂へ。 この日は2ヶ月に一度行われる「サステナブル・シーフード」が提供される日でした。 その日のメニューはデジタルサイネージに掲載。栄養価や値段も表示されています。 利用前のアルコール消毒、机にはアクリル板、調味料は個包装、漬物廃止など新型コロナウイルス対策がおこなわれています。 小鉢も充実。この日は切干大根、茄子揚げ煮、出し巻玉子、南瓜煮、ちくわの磯辺揚げ、ユーリンチー、水菜のおひたし等々。 メインメニューは「主菜A」「主菜B」「アラカルトA」「アラカルトB」「バラエティ」「日替わりらーめん」など。 配膳コーナーには、おにぎりも数種類用意されていますので、少し足したい方はここでチョイス。 食事を選んだら座席へ。同社の在館数は約550人、1日の喫食数は約300食です。 営業時間は11:30〜13:00まで。新型コロナウイルス対策として15分ごとに利用開始時間が段階的に設定されています。 新型コロナウイルス対策で座席を間引いているので、現在の利用可能座席数は約200席。 天井や床はやすらぎが感じられる木目調のデザインとなっています。 社員食堂ではなるべく地産地消を意識し、地域の食材を使用することを重視しています。 ボックス席を利用している社員の方々。席間は透明アクリル板で仕切られていますね。 こちらはテーブル席。コロナ禍でも、ランチタイムは貴重なコミュニケーションの場となっている様子がうかがえます。 アクリル板に数字が表示されており、もし何かおきたときに、社員食堂のどの場所に誰が座っていたかを追跡できるようになっています。 【主菜A】ハンバーグ&生姜焼き 【主菜B】鶏のチゲ煮 【バラエティ】タラの唐揚げ丼 柚子胡椒みそだれ 【アラカルトB】おでん 【VOICE】「カフェのような雰囲気で外食している気分です。メニューも豊富なので体調や気分に応じて選べるのがありがたいですね」 【VOICE】「植物も多く、社員食堂はリニューアル前と比べて落ち着ける雰囲気になり、リラックスできます」 【VOICE】「社員食堂は毎日利用しています。メニューはたくさんあるし、リラックスや気分転換ができます」 【VOICE】「社員食堂は週に3、4回は利用しています。普段栄養バランスをあまり気にしないんですが、健康診断でも悪いところはないのは社員食堂のおかげかも」 皿に付けられたタグからの電波情報で値段を読み取るRFID方式。トレイを置くだけで値段が表示され、社員証で精算できます。 社員食堂と同じフロアには「りんりん」というコンビニがあります。スイーツやドリンクのほか、パナソニック製のマスクも販売されています。 社員食堂の横にはまるでカフェのようなリラックススペースも。打ち合わせなどで利用されています。 この日はリラックススペースを利用して、健康診断が行われていました。 ご案内いただいた同社の広報課の吉田課長(左)、総務課の北田係長。ありがとうございました。 【おまけ】自転車通勤を推奨している同社の駐輪場。自転車通勤者は約200名にものぼり、発汗対策としてシャワールームも完備とのこと。
まとめ
サステナブル・シーフードで社員に啓蒙する社員食堂
数年前、パナソニック サイクルテック社のオフィスでは会議室や社員同士のコミュニケーションスペースが不足するといったことや、当時の社員食堂が「ランチタイムに食事をするだけの場所」となっていることなど、社屋における諸問題に対処する必要に迫られていました。そんな中、社屋全体をリニューアルする計画が立ち上がりました。2020年に初めて「健康経営優良法人ホワイト500」に認定されるなど、「従業員ファースト」を掲げる同社としては、「社員食堂を最初にリニューアルしよう」となったそうです。
そうして着手された社員食堂のリニューアル計画は、少人数で独断的に決定するのではなく、工場や間接部門など各部署の従業員全員にアンケートを採って各部門の要望を把握した後に行なわれました。その結果、コミュニケーションやリラクゼーションとしての利用も可能となっただけでなく、会議や自転車の販売店による工場見学後の食事会、そして新製品発表のプレスリリースの場としての使用も可能な施設となったのです。
もちろん食事面でも従来以上に力をいれており、従業員の健康向上を意識したメニューを提供していることは勿論のこと、地産地消メニューを積極的に使用されています。さらに特筆すべきなのが環境やSDGs活動としての活用も行なっていることです。パナソニックグループがWWFジャパンとの20年に渡る協働の一環として、社員食堂でサステナブル・シーフードの導入を実現していることもあり、同社の社員食堂では2ヶ月に1度「サステナブル・シーフード」(※持続可能な生産、加工・流通・販売家庭における管理やトレーサビリティの確保について認証を取得しているシーフード)を使用したメニューが提供される日が設定されています。この日はMSC(天然水産物)認証やASC(養殖水産物)認証を取得している水産物が使用されるとともに、社員にも広く「サステナブル・シーフード」について周知されています。
「サステナブル・シーフード」については、コストや限られた食材においてどのように美味しく調理できるかといった問題も挙げられますが、社員食堂でSDGs(持続可能な開発目標)「14:海の豊かさを守ろう」を実践する、先進的な取り組みとして今後各社の食堂での展開も期待されることから、社食ドットコムも注目しています。
大阪府柏原市片山町13−13
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